コラム

「最もセクシーな下院議員」が脱落、次の英首相は「対中国最強硬派」か「王子様」か

2022年07月21日(木)20時10分

トラス氏「イギリスの櫻井よしこ」

経済重視の現実主義者スナク氏はイギリスの対中政策についても「議論がニュアンスを欠くことがあまりにも多い」と批判的で、北京との「成熟し、バランスのとれた関係」を望んでいる。一方、トラス氏は「イギリスの櫻井よしこ」と表現するのがピッタリするほど、正真正銘の対中最強硬派として知られている。

旧ソ連から「鉄の女」と恐れられた故マーガレット・サッチャー首相を意識するトラス氏は昨年12月、有力シンクタンク、英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の演説で権威主義国家のロシアや中国を念頭に「今こそ自由世界は反撃し、経済とテクノロジーの力を使って恐怖ではなく自由を促進する時だ」と呼びかけた。

「自由のネットワークを構築し、自由のフロンティアを開拓する。自由を愛する国々が互いに貿易を行い、安全保障上のつながりを構築し、パートナーに投資し、より多くの国を自由の軌道に引き込めば私たちはより安全で自由になる。私たちのアイデアを支持し、影響力を高め、目的に賛同する人々を鼓舞すれば自由のグローバルネットワークとして前進できる」

中国の台頭を抑える方法として「自由のフロンティア」を構築し、「同じ考えを持つ」世界中の国々と協力する必要性を強調した。保守党下院議員に対して、もし首相になったら中国新疆ウイグル自治区で起きていることをジェノサイド(大量虐殺)として公的に認めると約束したとされる。

スナク氏はトラス氏の減税政策を「おとぎ話」と批判し、トラス氏はスナク氏の増税政策はイギリスを景気後退に陥れると反撃する。9月5日、どちらが「10(首相官邸の住所、ダウニング街10番地)」と記された漆黒の扉の前に立っているのか、予想するのは極めて難しい。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

キンバリークラーク、「タイレノール」メーカーを40

ビジネス

12月FOMC「ライブ会合」、幅広いデータに基づき

ビジネス

10月米ISM製造業景気指数、8カ月連続50割れ 

ビジネス

次回FOMCまで指標注視、先週の利下げ支持=米SF
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story