加谷珪一が考える『ポスト新産業革命』

「人口減少」×「人工知能」が変える日本──新時代の見取り図「自動車産業編」

2018年03月19日(月)10時50分

写真はイメージです。 chombosan-iStock.

個人の権利、私有の概念、社会の倫理など、18世紀の産業革命は物質的豊かさをもたらし、人間の価値観を中世以前とはまるで異なるものに変えた。

そして、本格的な「人口減少」時代を迎えた今、「AI(人工知能)」による新しい産業革命が、再び人間の価値観を根本から変えようとしている。

「人口減少」と「人工知能(AI)」後の日本をテーマにした新刊『ポスト新産業革命 「人口減少」×「AI」が変える経済と仕事の教科書』(CCCメディアハウス)を上梓する経済評論家の加谷珪一氏による特別寄稿(全4回:金融機関編/小売編/自動車産業編/不動産・住宅関連業界編)をお届けする。

新時代の見取り図「自動車産業編」

今後10年の間に、自動車業界は未曾有の変化に直面する可能性が高い。AI(人工知能)があらゆる業界に影響を及ぼすというのはすでに常識となっているが、自動車産業の変化は他業種の比ではないだろう。

その理由は、AI化(自動運転)、EV(電気自動車)化による産業構造の転換、シェアリング・エコノミーによる利用形態の変化という3つの大波が同時に押し寄せているからである。

クルマはもともとEVが主流だった

自動運転化とEV化、そしてシェアリング・エコノミーの進展はそれぞれ別の出来事であり、直接的な関連性はない。だが、これらをバラバラな出来事として捉えてしまうと問題の本質を見誤る可能性がある。自動車産業の今後を考える上でもっとも重要なのは、3つの事象が地下茎のように絡み合っている現実を認識し、相互の関係性を理解することである。

歴史を遡れば、クルマが誕生した時点ではEVが主流だったが、当時は性能のよいバッテリーがなく長距離運転ができないという問題があった。このため一旦は、ガソリン・エンジンが自動車の動力源として普及したという経緯がある。

だが、自動車の走行パターン(加速減速を短い頻度で繰り返す)というのは、実は内燃機関の工学的特性と相性がよくない。本コラムは技術に関するものではないので詳細は割愛するが、回転数の上昇に対して山型のトルク(回転力のこと)特性を持つガソリン・エンジンは一般的な自動車の走行にはそれほど適していないのだ。

ガソリン・エンジンはこの欠点を補うため、トランスミッション(変速機)という重い部品を搭載しなければならず、エネルギー効率が悪くなるという欠点を抱えていた。つまり軽くて良質な電源さえあれば、ガソリン・エンジンは容易にモーター駆動にシフトする可能性が最初から存在していたのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア前運輸相が自殺、プーチン氏による解任直後 連

ビジネス

焦点:増産に舵切った日本のコメ政策、価格の落ち着き

ビジネス

今後48時間で貿易巡り発表へ、書簡は最後通告ではな

ビジネス

中国人民銀、一部金融機関に最近のドル安への見解尋ね
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗」...意図的? 現場写真が「賢い」と話題に
  • 2
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 5
    コンプレックスだった「鼻」の整形手術を受けた女性…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 9
    ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知…
  • 10
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story