コラム

次期総裁にはプレッシャーが...日銀、「逃げ切り」黒田総裁の大きすぎる置き土産

2023年02月02日(木)11時33分
日銀の黒田東彦総裁

KIYOSHI OTAーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

<1月の金融政策決定会合で「現状維持」を決めたことで、次の日銀総裁には先送りにされてきた難しい問題が一気にのしかかることになる>

通常国会が1月23日からスタートした。政府は黒田東彦・日銀総裁の後任人事案について2月上旬に国会に提示する方針を示しており、市場は人事の行方を固唾をのんで見守っている。黒田氏の任期は4月8日までだが、雨宮正佳、若田部昌澄の両副総裁については一足早く3月19日に任期満了を迎える。このため黒田氏は副総裁交代のタイミングに合わせ、4月を待たずに退任することで新体制への移行をスムーズにするとの見方も出ている。

前回(1月17~18日)の金融政策決定会合では大きな変化はなく、大規模緩和策の維持を決めた。前々回(2022年12月19~20日)の会合において日銀は長期金利の上限を拡大し、政策修正に踏み切ったことから、市場では日銀が再度、金利を引き上げるのではないかとの観測が高まっている。海外投機筋を中心に日本国債には大量の売りが仕掛けられ、日銀は国債価格を維持するため、連日5兆円近くの大規模な国債買い入れを余儀なくされた。

現状維持を決めた前回の会合では、一連の売り圧力を跳ね返した格好だが、逆に問題を先送りにしたとも言える。それは今後のスケジュールを見るとより鮮明になってくる。

新総裁が受けるプレッシャーは高まった

2月に金融政策決定会合は行われず、次回の会合は3月9~10日の予定である。この時には新総裁人事が決まっているはずなので、黒田氏が大きな決断をするとは考えにくいし、決断すべきでもないだろう。

そうなると、今回の会合で再修正を見送ったことで、必然的に市場の関心は新総裁誕生後の4月下旬の会合に向けられることになる。黒田氏は日程をうまく駆使して逃げ切ったとみることができるし、その分だけ新総裁が受けるプレッシャーはさらに高まったといってよいだろう。

市場の予想どおり、雨宮氏や前副総裁の中曽宏氏が総裁に就任した場合には、大胆な政策変更は打ち出さないものの、着実に大規模緩和路線の修正を進めていく可能性が高い。市場では現時点での適正金利について1%程度とみており、新体制の日銀はどこかのタイミングで金利の上限を1%程度まで引き上げるか、長期金利そのものを操作するイールドカーブ・コントロールと呼ばれる施策を撤廃することが予想される。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国の人口、4年連続で減少 25年は14億0500

ビジネス

午前の日経平均は続落、一時800円超安 選挙情勢の

ワールド

印リライアンス10-12月利益が予想届かず、コスト

ワールド

原油先物横ばい、イラン抗議デモ沈静化で供給懸念後退
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story