コラム

宇野・カジサック問題に見る、「ムラ社会」日本の足かせ

2019年02月19日(火)13時30分

2月3日、宇野常寛氏(@wakusei2nd)のツイートより

<2月2日のホリエモン万博での一件。浮き彫りになったのは、日本社会はいまだに大多数の同調圧力というものが根強く存在する、前近代的な「ムラ社会」ということ。他人の足を引っ張る状況が、日本の経済低迷の要因になることをそろそろ自覚しても良いはずだ>

批評家の宇野常寛氏が、カジサックを名乗るお笑いコンビ「キングコング」の梶原雄太氏から失礼な対応を受けたとしてイベントを途中退場したことが大きな騒動となった。宇野氏は信頼関係のない間柄での「いじり」は単なる「いじめ」に過ぎないとして、いわゆるテレビのバラエティ番組的な風潮を強く批判している。

これは、日本社会におけるムラ社会的な同調圧力への批判ということになるだろうが、この問題の根は深く、実は日本経済がうまく成長できないことの要因のひとつにもなっている。

日本社会の同調圧力についてはこれまで何度も議論されてきたが...

宇野氏とカジサック氏の間でトラブルが発生したのは、「ホリエモン万博」というイベントの中で行われたチャンバラ合戦大運動会である。

宇野氏は、最初のうちはカジサック氏による絡みを受け流していたそうだが、カジサック氏によるいじりの度が過ぎるとしてイベントを途中退場。その後、ツイッター上で、本人が納得しない「いじり」は「いじめ」に過ぎないと抗議する発言を行った。

ネット上では、不快なものに対してノーを突きつけた宇野氏の対応を支持する声が多いようだが、一方で宇野氏に対しては「イベントを放棄するのは無責任である」「大人げない」といった批判の声も寄せられている。

今回の件は、宇野氏が完全な一般人ではなく、メディアに出ている人物であることから、少々、判断を難しくしている面があるかもしれないが、日本社会に強い同調圧力があり、息苦しい雰囲気であることは多くの人が認めるところだろう。

これまでも、日本社会の前近代性についてはしばしば議論の対象となってきたが、多くは社会的な切り口であった。だが、こうしたムラ社会的な体質は、実は経済成長にも深刻な影響を与えている。

【参考記事】他人を信用できない「ROM専」日本人のせいで経済が伸びない?

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日経平均は小反落で寄り付く、利益確定売りが上値抑制

ワールド

グリーンランドは「安全保障に必要」、トランプ氏が特

ビジネス

ペルツ氏のトライアンの連合、アクティブ運用ジャナス

ワールド

米当局、中国DJIなど外国製ドローンの新規承認禁止
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story