コラム

BBCのジャニー喜多川「性加害」報道が問う、エンタメ界の闇と日本の沈黙

2023年03月16日(木)16時35分

今回のBBCの番組では、性加害の複雑な問題の1つ──被害者が時に、自分の身に起こった出来事について混乱した感情を抱いているように見えること──が特に興味深かった。

レイプ事件の場合、被告側弁護人は、被害者が事件後に加害者に対して一見したところ親しげなメールなどを送っていることを証拠として提示することがある。現にマイケルの被害者の1人であるウェイド・ロブソンは、被告マイケル側の証人として法廷に立ち、何も間違ったことは起こらなかったと証言した。

実際のところ人によっては、性的虐待のトラウマのせいで、精神的苦痛を加害者との親密な関係に上書きしたくなることがある。DV被害の妻が、夫から愛されていると信じている、夫が暴力を振るったのは自分に問題があったせいだ、と考えがちなのと似ている。

加害者はそれを知っていて、利用する。イギリスや他の国々の警察は、この手のグルーミング(手なずけ行為)と支配的行動を見抜くように訓練を積むようになった。

今回のBBCの番組は、喜多川の件が日本について何を物語っているか、という問題を見事に提起しつつも、それに対する答えはあまり提示していない。でも答えを出すべき問題があることは明らかだ。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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