コラム

コロナ禍で揺らぐ? イスラム諸国の一夫多妻制

2020年07月01日(水)18時10分

エジプトのシシ大統領は、男女平等を推進することを公約として掲げている。同国の宗教権威であるタイイブ師には、男女平等という近代的な規範とイスラム的規範を擦り合わせていかなければならない、という使命感があるのだろう。だが『コーラン』で一夫多妻が明示的に認められていると知っている一般信徒がそれを許さない。

アズハルは番組放送の2日後、「タイイブ師は一夫多妻を禁じようとしているわけではない。『コーラン』やスンナの規範に反する法を作ろうなどという意図は全くない」と釈明する異例の声明を発表した。

イスラム世界において、啓示や戒律、伝統はわれわれが考える以上に重要な位置を占める。コロナ禍を経たからといって、それらを捨て「新しい生活様式」へと移行するのは不可能に等しい。

<本誌2020年7月7日号掲載>

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2020年7月7日号(6月30日発売)は「Black Lives Matter」特集。今回の黒人差別反対運動はいつもと違う――。黒人社会の慟哭、抗議拡大の理由、警察vs黒人の暗黒史。「人権軽視大国」アメリカがついに変わるのか。特別寄稿ウェスリー・ラウリー(ピュリツァー賞受賞ジャーナリスト)

プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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