コラム

認知戦で狙われているのは誰なのか?──影響工作の本当の標的

2025年09月03日(水)17時58分

FTIとFTSに現実を認識させることが最優先課題

もちろん、これはひとつの見方であって、厳密に検証されているわけではない。

当然、私自身もなにかに騙されている可能性がある。

常に多角的に考えることが必要で、この領域の現状を考えると致命的に欠落しているにもかかわらず、まったく考慮されていないことが多すぎる。

たとえば冒頭にも書いた実態の把握に関連したことだ。

・影響の実態が把握されていない
・影響の実態把握なしに大々的にメディア、専門家、政治家が情報発信する無責任が常態化している
・検証なしに対策が決定、進められている

繰り返しになって恐縮だが、優先すべきは実態の把握なのである。

認知戦を仕掛けられている、といって影響の有無も不明な攻撃の検知と対症療法的対処に予算と時間を費やすのは相手の思う壺で、欧米の真似をするのは失敗を繰り返すだけだ。

とはいえFTSであるメディア、専門家、政治家が自らの発信した情報がどのような負の影響を与え、ロシアに益する結果になった実態を明らかにするのはハードルが高そうだ。

そもそも政治家の失態はメディアが暴くものだし、メディアの誤謬は専門家が指摘するものだと思うが、トリオではめられていて、突っ込み役がいない。

3者のうち、ひとつでも実態把握に基づいた対策を考える方向に進むことを祈りたい。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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