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内部告発で暴露されたフェイスブックの管理と責任能力の欠如

議事堂への暴徒乱入を招いた? REUTERS/Jonathan Ernst TPX IMAGES OF THE DAY
<META社を始めとするビッグテックはそのパワーに応じた責任を放棄している無責任の帝国と言える>
META社(旧フェイスブック社)とはなにか
『アンチソーシャルメディア』(シヴァ・ヴァイディアナサン著)によればMETA社(旧フェイスブック社)のCEOマーク・ザッカーバーグは善意に満ちているという。しかし、その善意が間違った方向へと進んでいる。シヴァ・ヴァイディアナサンの言葉を借りれば、「思い上がった善意」で世界中の民主主義と知的文化の劣化を招いたという。
そうなってしまった理由はひとえにMETA社が大きくなりすぎたためだ。企業規模の管理ではとても間に合わなくなり、いたるところで予期しない問題を引き起こし、対処に失敗し続けている。かつてはアラブの春など肯定的な面が評価されたこともあったが、じょじょにそれが制御不能の混乱を引き起こす力なのだということがわかってきた。だから2021年1月に起きたような暴徒の議事堂乱入のような事件にもなり得る。
そのパワーは留まることを知らない。2017年の段階でMETA社の無償インターネット・サービスFree Basicsがネットサービスをほぼ独占した国は60カ国におよび、多くの人々はMETA社とスポンサーのサービスだけを利用しており(それ以外は有償となる)、ニュースもそこで表示されるものを読んでいる。META社が60カ国のメディア・エコシステムを支配しているに等しい。前掲書『アンチソーシャルメディア』には、「フェイスブックの設計やアルゴリズムのわずかな変更ですら、国全体の政治的命運を変えかねないのだ」と書かれているくらいだ。
2017年10月にはカンボジア、スリランカ、ボリビア、グアテマラ、セルビアにおいてMETA社がニュース表示を変更する実験を行ったせいで、独立系ニュースサイトへのアクセスが激減し、その結果言論統制が強化される事態を起こした(The New York Times)。シヴァ・ヴァイディアナサンの言葉がおおげさではないことがわかる。その影響力はもはや1ネットサービスあるいはメディアの枠をはるかに超えている。
2018年に刊行した拙著『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)でフェイスブックはすでに国家であると指摘したが、じょじょに同様の認識が世界に広がっている。ユーラシア・グループ代表のイアン・ブレマーは2022年の10大脅威の2番目に「テクノポーラー」な世界をあげた。端的に言えばビッグテックが地政学上のアクターとなったことを指している。これがリスクにあげられているのは、そのパワーに比較して、統治能力に欠けているためだ。META社を始めとするビッグテックはそのパワーに応じた責任を放棄している無責任の帝国と言える。
そして昨年には管理統治能力の欠如とそもそもそうした責任を負う気がないことが、内部告発=フェイスブック・ペーパーで白日の下にさらされた。
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