ニュース速報
ワールド

米燃料価格は長期高止まりの兆し、有権者が中間選挙で政権に反発も

2026年03月19日(木)09時52分

写真はガソリンスタンドの価格表示板。3月8日、米ワシントンで撮影。REUTERS/Kylie Cooper

Jarrett Renshaw

[18日 ロ‌イター] - トランプ米大統領と与党共和党の‌議員は、イラン攻撃による原油高騰は極めて一時的で、11月の中​間選挙で政治的痛手を受けることはないと楽観している。しかし市場関係者や業界アナリストによると、戦⁠争終結などでイラン情勢が収束した​としても、米国の燃料価格は消費者を苦しめるほどの高水準に長くとどまる兆しが出ているという。

原油価格はイラン攻撃とその後のホルムズ海峡の事実上の封鎖に伴う世界的な供給の混乱を背景に急上昇。米国の指標は、ロシアによるウクライナ侵攻が起きた2022年以降で初めて1バレル=100ドルを突破した。⁠米国の軽油も1ガロン=5ドル超と、22年終盤以来の高値になった。

トランプ氏は、エネルギー価格上昇はイランを軍事的に無力化する対価として安いものだと繰り返している。17日には、⁠戦争が​終わればエネルギー価格は一気に下落するとの見通しを改めて示した。

しかし原油先物や政府予測、さらには季節的な需要の高まりなどは、中東の緊張が和らいでも原油とガソリンの価格は下がらない可能性を示唆している、とアナリストは警告する。

その理由としてエネルギー価格は上昇よりも下落する方がスピードが鈍る傾向にある点を挙げている。

ケプラーのアナリスト、マット・スミス氏は「これらの価格⁠が下がるのには時間を要する」と述べた。

燃料価格が夏場いっぱい高い‌状態が続けば、有権者は家計逼迫の責任がトランプ政権にあると判断し、中間選挙で「お灸を⁠すえる」⁠可能性がある。各種世論調査でも生活費増大を心配する声が広がっていることが分かり、野党民主党は「アフォーダビリティー(暮らしやすさ)」を主要な争点に掲げようとしている。

ミューレンバーグ・カレッジのクリス・ボリック教授(政治学)は、トランプ氏は自身のSNSとホワイトハウスの「拡声器」を駆使して政治的‌な事象を都合良く説明してきたが、ガソリン価格を思い通りにするのは難し​いと指摘。「‌それ(ガソリン高)は生活の苦⁠しさを最も露骨に思い出させ、有権者の​感情的反応を上回るほどの妥当性を持つ主張によって納得を得るのはほぼ不可能だ」と付け加えた。

政府見通しも急激に悪化している。エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が今月公表した予想では、北海ブレントの今年の平均価格は1バレル=約79ドル、米ガソリン平均小売価格を1ガロン=3.34ドルと、それぞれ従来に比べて37%と15%弱の上方修正になった。

来年についても国際‌原油価格の予想はおよそ22%、米ガソリン小売価格は8.4%前後も切り上がっており、供給の引き締まりと地政学リスクによってエネルギー価格の高止まりが続く見​込みが浮き彫りとなっている。

LSEGのデータに基づくと、⁠米原油先物の今年これまでの平均価格は1バレル=68.10ドルだが、現在から年末までの平均は85.25ドル、来年も71.35ドルで推移しそうだ。昨年平均は約64.70ドルだった。

ラボバンクのエネルギー・ストラテジスト、フローレンス・シュミ​ット氏は、エネルギー価格の正常化はゆっくりとしか進まないだろうと話す。

「たとえ明日和平合意が締結されたとしても、(タンカー)航行とエネルギー輸送が完全に元通りになるには数カ月かかる」と説明し、原油価格は年末までにせいぜい70ドル台半ばまで下がるのが関の山ではないかと付け加えた。

ロイター
Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB議長、関税・イラン戦争による物価上昇を警戒 

ビジネス

スイス、26年の経済成長率見通しを1%に引き下げ

ワールド

イラン、カタールのエネ拠点攻撃 サウジも標的に ガ

ワールド

アイスランド外相、28年中のEU加盟「楽観」 漁業
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 3
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 4
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 5
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    観客が撮影...ティモシー・シャラメが「アカデミー賞…
  • 10
    原油高騰よりも米国経済・米株市場の行方を左右する…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 10
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中