アングル:ウォーシュ次期FRB議長、バランスシート縮小は困難か
写真はケビン・ウォーシュ氏。2017年5月、ニューヨークで撮影。REUTERS/Brendan McDermid
Michael S. Derby
[17日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)議長に指名されたケビン・ウォーシュ氏は、FRBのバランスシート縮小を望んでいる可能性があるが、金融システムに大幅な手直しをしない限り、実現しそうにない。たとえ手直しをしたとしても、不可能かもしれない。
FRBが現在、金融政策目標を達成するために採用しているシステムでは、銀行システムが多額の資金を保有していることが前提条件になっている。市場では、バランスシート縮小には、FRBの短期市場金利の管理方法の変更と、銀行の準備預金需要を規定する規制の変更を組み合わせる必要があるとの見方が多い。
BMOキャピタル・マーケッツのアナリストは「現実には、銀行の準備預金需要を減らす規制改革がない限り、SOMA(公開市場操作口座)の保有額を大幅に縮小することは実現不可能かもしれない。このプロセスは数カ月ではなく、数四半期かかるだろう」と述べた。
ブランダイス大学のスティーブン・チェケッティ氏とニューヨーク大学のカーミット・ショーンホルツ氏は、2月8日のブログで「中銀のバランスシートが大きいと、政府の資金調達を促し得る点で望ましくない」としつつ「現行のルールと金利操作の道具立ての下では、バランスシートを大きく縮小すれば、短期市場が大きく振れやすくなる。病を治す薬が病状を悪化させかねない」と警鐘を鳴らした。
<バランスシートに批判的なウォーシュ氏>
FRBは約20年前の金融危機と2020年の新型コロナ禍で、国債やMBS(住宅ローン担保証券)を大規模に購入し、市場の混乱を抑えた。その結果、保有資産は22年春に9兆ドルへ達した。縮小局面も2度あったが、購入前の水準に戻るところまでは至っていない。
ウォーシュ氏のバランスシート運営への批判が直近で強まったのは昨夏。FRBが22年に開始した量的引き締め(QT)で保有資産を減らしていた時期と重なる。
QTは金融システムから過剰流動性を吸い上げる狙いだった。FRBは、FF金利を引き続きしっかりコントロールできる程度まで流動性が低下した時点でQTを終えるとしていた。昨年末、短期市場金利の上昇が目立ち、資金繰りの都合で一部の金融機関がFRBから直接借り入れを余儀なくされる場面も出たことで、その水準に達したと判断した。
QT終了で不安定化していた短期市場は落ち着いた。FRBは総資産を22年のピークから現在の6.7兆ドルまで減らした。その上で、短期市場金利を技術的に管理する目的から、春にかけて保有を積み増している。
<ルール変更はあるか>
ウォーシュ氏は、FRBの多額の保有資産が金融市場をゆがめ、ウォール街を「メインストリート」より優遇していると主張してきた。バランスシートをさらに縮小し、流動性を経済全体に回すべきだという立場だ。
ただ、銀行が高水準の準備を必要とする限り、FRBが資産圧縮で流動性を引き揚げれば、FF金利の制御が効きにくくなり、ひいては物価と雇用という使命の達成能力が損なわれかねない。
モルガン・スタンレーのアナリストは6日、規制見直しで流動性需要を弱められる可能性はあるとしつつ、「流動性バッファーを薄くすれば金融安定リスクが高まる」と指摘した。
JPモルガンのエコノミスト、ジェイ・バリー氏とマイケル・フェロリ氏は11日、FRBのレポ運用を通じたオンデマンド融資を強化すれば、銀行が手元資金を減らしても大丈夫だという安心感につながる可能性があると顧客に説明した。ただ、それでも「QTを再開できる可能性は高くない」とみている。
財務省とFRBの連携を強めることで、保有資産縮小の余地が生まれるのではないかとの見方もある。
もっとも、多くの市場関係者は、金融市場の現実が、最終的には大きな改革の動きを抑制するとみている。
エバーコアISIのアナリストは17日のリポートで、危機前のように流動性が乏しい環境で、FRBが頻繁に市場へ介入しながら金利を誘導する運営へ戻すことを、ウォーシュ氏が強く推し進めるとは考えにくいとした。
また、QTの再開も現実的ではないとし、仮に再開すれば、将来バランスシートを政策手段として使うことに消極的だというシグナルになり、債券市場の調達コストが今の時点で上昇してしまう、と指摘した。





