アングル:自民圧勝に円債市場は冷静、米国の「視線」意識 政策は抑制的の思惑
写真は総選挙で歴史的勝利を収め、首相官邸に到着した高市首相。2月9日、東京で撮影。REUTERS/Kim Kyung-Hoon
Mariko Sakaguchi
[東京 9日 ロイター] - 衆議院選挙で自民党が圧勝した週明けの東京市場で、金利上昇圧力はさほど強まっていない。より財政拡張的な政策を打ち出していた野党の敗北に加え、日本の財政拡張策が円安を誘引しかねない状況に米国が問題意識を示していることが、抑制的な財政政策につながるとの思惑がある。もっとも、財政拡張懸念や日銀の利上げ継続への思惑も根強い。目先は綱引き状態となり、円金利は高止まりが続くとみられている。
<金利急騰リスクはいったん後退>
8日投開票の衆院選では、自民党が単独で316議席を獲得、定数の3分の2を上回った。連立相手の日本維新の会と合わせて352議席を確保、絶対安定多数の261議席を大きく超えた。
選挙明けとなった9日の円債市場では、中長期ゾーンの金利上昇が目立った一方、超長期ゾーンは底堅い動きとなった。新発10年債利回りが一時2.290%まで上昇、新発30年債も一時3.615%まで上昇した後、金利上昇幅を縮小するなど、事前に一部で警戒された金利上昇圧力は限られ、財政プレミアムが剥落した格好となった。中期債売りと超長期債の買いを組み合わせるフラットナーの動きもでているとみられている。
市場では、より財政拡張の路線を主張していた野党でなく、「責任ある積極財政」を掲げる自民党を選んだという国民の声を政府も受け止めるとの見方から、理性的な財政運営になることを期待する声があがっている。
加えて、米国が過度な円安への懸念を共有していることも、日本の財政政策を抑制的にするとみられている。三井住友銀行のチーフストラテジストの宇野大介氏は「高市政権は円金利の上昇を通じた欧米の金利上昇を招く事態を避けるための配慮をしていく」とみている。
1月の日銀金融政策決定会合後の米ニューヨーク連銀によるレートチェックの実施やベセント米財務長官の発言もあり、「米国側が円安に対する危機感を示し、政府も円安を容認しないとの姿勢を示したことから、市場では財政にも配慮するという期待感が広がっていた」(ニッセイ基礎研究所の金融調査室長、福本勇樹氏)との声が出ている。
三井住友銀の宇野氏は「責任ある積極財政の範囲内にとどめるような財政運営となる」と予想。期限付き消費減税ではなく、給付付き税額控除の実施が前倒しとなる可能性もあるとみており、以前のような金利の急騰リスクは後退しているとの見方を示す。
<海外勢には高利回り>
円債市場では先週から金利低下の動きが進んでいた。高市早苗首相の衆院解散表明後に実施された40年債、2年債、10年債、30年債の入札は波乱なく通過。いずれの入札も共通していたのが「海外勢による札が目立った」(国内証券債券セールス担当)ことだ。
財務省が公表する週次ベースの対外及び対内証券売買契約等の状況によると、衆議院選挙観測が高まった1月以降も海外勢による中長期債の買い越しが続いている。特に、1月25日―31日にかけては2兆811億円の買い越しがみられた。
財政拡張政策への懸念が根強い一方「それに伴う金利水準の高さに着目し、投資妙味があるという判断が続いているようだ」(国内証券ストラテジスト)という。
シングルAの格付けの日本国債をドル建てにした場合、3%近い利回りが上乗せされる。超長期債はいずれも3%を上回る利回りを維持しており、海外勢は結果的に6%を超える利回りを獲得できる。この利回り水準は信用格付けが投機的と低い代わりに利回りが高く設定される米ハイイールド債利回りと同等の水準だ。
<長期金利2.2%台がフェアな水準か>
ただ「国内投資家は入れ替え中心の動きにとどまり、様子見姿勢は強い」(前出の国内証券債券セールス担当)という。政治の不透明感が後退したことを受けて円債を買いやすくなった面がある一方、消費減税を巡っては「国民会議での議論に焦点が集まりやすく、市場参加者の見極めが続きやすい」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券の債券ストラテジスト、藤原和也氏はみる。
ニッセイ基礎研の福本氏は「財政が拡張する方向には変わりない。長期的にみれば、日銀が利上げ姿勢であることを踏まえると、金利は低下しにくい」と指摘。現在想定される日銀の利上げペースやターミナルレート(利上げ最終到達点)予想が1.7%付近であることを踏まえると「長期金利の居所は2.2%台がフェアな水準」で、金利は高止まりが続くとの見方を示した。
(坂口茉莉子 編集:平田紀之 石田仁志)
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