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焦点:第2次トランプ政権発足1年、世界で「中国シフト」加速

2026年01月30日(金)12時51分

写真はロイターのインタビューに応じるトランプ米大統領。ホワイトハウスで1月14日撮影。 REUTERS/Evelyn Hockstein

Liz ‍Lee Samuel Shen Sumeet Chatterjee

[北京/香港 28日 ロイター] - トランプ米大統領が1年前に‌「米国第一主義」を掲げて就任した際、中国の停滞する経済に苦難をもたらすと見る向きが多かった。しかし、中国政府は他の貿易相手国と冷え切っていた関係を改め、記録的な貿易黒字を計上したのだ。

アナリストたちによると、トランプ氏の政策が米国の伝統的な‌同盟国に対する結び付きを揺るがす一方で、中国​はカナダやインドを含む主要な貿易相手国と関係を構築するよう力を入れているという。

世界第2位の経済大国である中国はその結果、2025年の貿易黒字が過去最高の1兆2000億ドルに達し、月間の外貨流入額は過去最大の1000億ドル台となり、通貨人民元の世界的な利用も拡大した。

スターマー英首相が最近冷え込んでいたビジネス関係の再活性化を目指し、中国を4日間の日程で訪問しているが、アナリストや専門家は中国政府がこれを機に世界の政治的および経済的な‌影響力をさらに拡大させるだろうと見ている。

ボストン大経済学教授のアレクサンダー・トミック氏は、中国が20兆ドル規模の経済と45兆ドル相当の株式・債券市場に支えられており、多くの国にとって「安定した貿易相手国」として浮上していると指摘する。

オールスプリング・グローバル・インベストメンツの新興国市場株式部門共同責任者のデリック・アーウィン氏は「中国が信頼できる安定した貿易相手国として自らを位置付けることに成功しており、それは理にかなっている」と述べた。

スターマー氏の訪中は英首相としては18年以来初めて。また、カナダのカーニー首相が今月初めに17年以来初めて北京を訪問した。

カーニー氏の訪問中、カナダと中国は貿易障壁を撤廃し新たな戦略的関係を構築するための経済協定に署名した。カーニー氏は中国を「より予測可能で信頼できる貿易相手国」だと表現した。

<回復力のある中国経済>

世界最大の2つの経済国である米国と中国は過去数年間​、地政学的な対立関係にあったが、トランプ氏が25年1月にホワイトハウスに復帰すると貿易やテクノロジーを⁠含む多方面で緊張が急激に高まった。

トランプ氏は4月、中国に対する関税を100%以上に引き上げたが、その後一部を撤回し一時的な休戦で合意‍した。中国はその一方で、米国以外の市場向けに輸出を拡大させて民間企業や市場を支援する方策を打ち出した。

25年の中国の対米輸出は20%減少したが、対アフリカは25.8%、対中南米は7.4%、対東南アジアは13.4%、対EUは8.4%それぞれ増加した。

トミック氏は「かつては中国に好意的でなかった多くの国々が今は中国に軸足を移しつつある。米国に対する取引が困難になればなるほど、中国にとってチャンスが広がるからだ」と述べた。

米国に対する貿易関係が緊張しているにもかかわらず、中国経済は国内消費の低迷や‍長期化する不動産部門の不況によるデフレ圧力を受けていながらも、25年の政府目標である5%成長を達成した。

中国はここ数カ‍月間、外資誘‌致を促進するための一連の措置を講じており、北京、上海、その他の地域でパイロット・プログラムを通じて、‍通信、ヘルスケア、教育のようなサービス分野の市場アクセスを拡大させている。

中国国家外貨管理局のデータによると、昨年12月の月間の外貨流入額は過去最大の1001億ドルを記録。外貨準備高は公式発表で3兆3600億ドルと10年ぶりの高水準に達した。

金融市場は貿易紛争の影響を免れて底堅さを見せており、上海総合指数はこの1年で27%上昇して米国株の運用成績を上回り、売買代金が過去最高を更新し人民元の国際的な利用が拡大した。

トランプ氏の予測不能な貿易・外交アプローチのために投資家にとってドルの魅力が低下し⁠ている状況で、中国政府は人民元の世界的な利用を拡大させる野心も押し進めていると、事情に詳しい銀行家たちは語った。

国際的に業務を展開する一部銀行は人民元の流動性をオフショア拠点で高めるとともに、中国と東南アジア、中東、欧州を結ぶ⁠貿易回廊で人民元建て決済がより迅速にできるような枠組みの構築を急いでいる‍という。

中国人民銀行の最新データによると、中国の対外取引に占める人民元建ての決済は15年前にほぼゼロだったが、現在は半分以上に達しており、外国向け銀行融資のほぼ半分が人民元建てとなっている。

<中国に対する警戒感>

しかし、外交アナリストたちの一部は中国の新たな経済的および政治的な友好路線​を警戒している。

ワシントンに拠点を構えるブルッキングス研究所の外交政策フェローのパトリシア・キム氏は「(米国の同盟国、友好国の)多くは中国の貿易に対するアプローチ、経済的な威圧の行使、未解決の海洋・歴史問題について相当な懸念を抱いている」と述べた。

「中国は現時点でトランプ政権の極端な言動や行動と比較すればより抑制的、または現実的に見えるかもしれない。しかし、中国政府の実際の行動は、安心感を与えるようなものになっていない」

ロイター
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