ニュース速報
ワールド

情報BOX:ベネズエラ軍は米軍の攻撃があった場合どのように対抗するのか

2025年12月01日(月)13時54分

 トランプ米大統領は29日、南米ベネズエラの上空や周辺の空域は「全面的に閉鎖された」と見なすべきだと交流サイト(SNS)に投稿した。詳細は明らかにしなかったものの、トランプ政権はベネズエラのマドゥロ大統領への圧力を強めている。写真はベネズエラのプエルトカベヨを通行するベネズエラ海軍の沿岸警備隊。9月11日撮影(2025年 ロイター/Juan Carlos Hernandez)

[29日 ロイター] - トランプ米大統領は29日、南米ベネズエラの上空や周辺の空域は「全面的に閉鎖された」と見なすべきだと交流サイト(SNS)に投稿した。詳細は明らかにしなかったものの、トランプ政権はベネズエラのマドゥロ大統領への圧力を強めている。

トランプ氏は、カリブ海と太平洋で麻薬密輸船だと主張する船舶を攻撃し、地上戦に発展する可能性もあると繰り返し述べてきた。これらの攻撃では80人以上が死亡している。一方、マドゥロ氏との電話会談では同氏の訪米の可能性についても話し合ったとも報じられている。

<ベネズエラ軍の戦力は>

ベネズエラの軍事力に詳しい6人の関係筋によると、同国の軍は、訓練不足、低賃金、軍事装備品の劣化によって弱体化しており、米軍の戦力はベネズエラ軍を圧倒している。

2013年から政権を握っているマドゥロ氏は、軍の将校を政府の役職に就かせることで軍からの忠誠心を保ってきた。しかし一般兵士の月給は現地通貨で100ドル相当にとどまっており、これは平均的な家庭が基本的に必要な額の約5分の1に過ぎないとされる。

複数の情報筋は、ベネズエラ軍の多くの部隊からは既に脱走兵が出ており、米軍が攻撃した場合にはさらに増加する可能性があると指摘している。

マドゥロ氏は約800万人の民間人が民兵組織で軍事訓練を受けていると主張している。しかし、ある情報筋は実際の防衛行動に参加するのは計数千人の情報要員と武装した与党支持者、民兵組織のメンバーだけになると推計している。

軍の装備も不足しており、それらの多くは数十年前に造られたロシア製だ。ベネズエラは2000年代にロシアのスホイ製戦闘機を約20機購入したが、米軍のB2爆撃機と比較すると見劣りするとされる。ベネズエラ軍のロシア製ヘリコプターと戦車、肩撃ち式ミサイルも時代遅れになっている。

<ベネズエラ軍の対抗策は>

情報筋およびロイターが確認した計画文書によると、ベネズエラは米軍から空襲または地上攻撃を受けた場合、ゲリラ戦形式で抵抗するか、混乱させる計画を立てている。

ベネズエラ軍高官らが詳細を明かさずに公言した内容によると、同軍の対抗策の一つは「長期的抵抗」と名付けられており、280カ所を超える拠点に配置された小規模軍事部隊が破壊工作や、ゲリラ戦を実施する。

マドゥロ氏が国営テレビで最近称賛したロシア製のイグラ地対空ミサイルシステムは5000基を配備済みだ。ある情報筋によると、攻撃を受けた場合には部隊が分散し、各地に潜伏するように命令が出ている。

第二の戦略は「無政府化」と呼ばれている。当局者は認めていないものの、情報機関と武装した与党支持者らが首都カラカスで混乱を引き起こし、ベネズエラを統治不能に陥れる作戦だと情報筋は解説している。

<ベネズエラの他の武装勢力は>

ベネズエラ西部では、国民解放軍などのコロンビアのゲリラ組織が活動している。この地域は麻薬のコカインの原料となるコカの栽培拠点でもある。

与党支持者らはオートバイの隊列で、マドゥロ政権への抗議活動と対峙することが多い。与党支持者らは武装している場合もある。

ベネズエラの野党勢力、非政府組織(NGO)、米政府、および一部の中南米政府は、マドゥロ氏とベネズエラ軍が麻薬密売組織と結託していると非難している。これらの麻薬密売組織は暴力行為も非難されている。

ベネズエラ政府はこうした関係を一貫して否定しており、米国がベネズエラに埋蔵している膨大な原油を掌握するため政権交代を図っていると主張している。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

エアバス機、1日にほぼ通常運航へ 不具合ソフトの更

ワールド

インドネシア貿易黒字、10月は市場予想下回る 輸出

ビジネス

設備投資7-9月期3四半期連続プラス、前四半期比で

ビジネス

エアバス機、1日にほぼ通常運航へ 不具合ソフトの更
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批判殺到...「悪意あるパクリ」か「言いがかり」か
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中