ニュース速報
ワールド

防衛費2%今年度達成、戦略的に財政出動 高市首相が所信表明

2025年10月24日(金)15時26分

 10月24日、高市早苗首相(写真)は所信表明演説で、防衛費を国内総生産(GDP)比2%へ引き上げる目標を2年前倒して今年度中に実現するとともに、国家安全保障戦略など安保関連3文書を来年中に改定することを目指すと語った。写真は、国会で所信表明演説を行う同首相。都内で24日撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Yoshifumi Takemoto

[東京 24日 ロイター] - 高市早苗首相は24日の所信表明演説で、防衛費を国内総生産(GDP)比2%へ引き上げる目標を2年前倒して今年度中に実現するとともに、国家安全保障戦略など安保関連3文書を来年中に改定することを目指すと語った。同文書は2027年度まで5年間の防衛費を43兆円へ積み増す根拠となっており、改定すればさらなる増額へ道を開くことになる。

経済・財政政策については「経済あっての財政」との考え方が基本だとし、戦略的に財政出動を行うとした。財政健全化の指標として財務省や自民党が重視してきた基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)には触れず、政府債務残高をGDP比で引き下げると説明。「財政の持続可能性を実現し、マーケットからの信認を確保する」と強調した。

21日の首相就任時に策定を指示した経済対策は、「速やかに取りまとめ、補正予算を(今)国会に提出する」とした。連立政権を組んだ日本維新の会と合意しているガソリン暫定税率廃止は今国会で廃止法案を成立させ、軽油引取税の暫定税率も早期廃止目指すことを掲げた。自治体向け重点支援地方交付金を拡充することや、冬期に電気・ガス料金を支援することも明言した。

成長戦略では「日本成長戦略会議」を立ち上げ、AI(人工知能)、半導体、造船、量子、バイオ、航空・宇宙、サイバーセキュリティなどの分野で「官民の積極を投資引き出す」とした。「原子力やペロブスカイト太陽電池など国産エネルギーは重要」と述べ、「次世代革新炉やフュージョンエネルギーの早期社会実装を目指す」とも話した。

岸田文雄政権が掲げた「資産運用立国」に向けた貯蓄から投資への取り組みは継続する方針を示した。同時に、対外投資の偏重が円安要因ともされていることを踏まえ、「金融を通じ、日本経済と地方経済の潜在力を解き放つための戦略を策定する」とした。

外国人増加による社会問題への対処を強化する方針にも言及した。人手不足で人材が必要なことや、訪日外国人が観光業にプラスの影響があることは認めつつ、違法行為があったりルールから逸脱したりした場合は「政府として毅然と対応する」とした。「政府の司令塔機能を強化し、土地取得等のルールのあり方についても検討を進める」とも述べた。

一方、維新との連立協議で合意したスパイ防止法については触れなかった。政府関係者によると、来年の通常国会で取り上げるためだという。

外交方針では27─29日に予定しているトランプ米大統領の訪日に言及。信頼関係を構築するとともに日米関係をさらに強化すると強調した。韓国と中国について「重要な隣国」と表現し、韓国とは首脳間の対話を通じて関係強化を図る考えを示した。

中国とは「安全保障上の懸念事項が存在する」とした上で、「首脳同士で率直に対話を重ね、戦略的な互恵関係を包括的に推進する」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領、中南米に空母派遣へ 軍事プレゼンス

ワールド

米朝首脳会談の実現呼びかけ、韓国統一相、関係改善期

ワールド

ロシア特使が訪米を確認、「対話継続を示す証拠」

ワールド

レーガン氏の自由貿易擁護演説が脚光、米カナダ間の新
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月29日、ハーバード大教授「休暇はXデーの前に」
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中