ニュース速報
ワールド

ドイツ、ウクライナ和平後の派兵巡り論争が激化

2025年08月21日(木)16時34分

ウクライナ戦争の和平合意の一環として、欧州が同国に平和維持軍を派遣するという西側諸国の議論がドイツで反発を招いている。写真はウクライナ軍の兵士。8月20日、同国ザポロジエ州で撮影(2025年 ロイター/Maksym Kishka)

Sarah Marsh Matthias Williams

[ベルリン 21日 ロイター] - ウクライナ戦争の和平合意の一環として、欧州が同国に平和維持軍を派遣するという西側諸国の議論がドイツで反発を招いている。地上部隊を派遣する可能性は現時点では低いものの、国内では激しい議論が巻き起こっている。

メルツ首相はウクライナでの平和維持活動へのドイツの参加に前向きな姿勢を示す一方で、連立政権内や欧州各国との間で調整が必要だと強調した。

連邦議会国防委員会の委員長である与党キリスト教民主同盟(CDU)のレーウェカンプ議員はロシアとウクライナの間で恒久的な停戦が実現した場合、ドイツ軍が必要になるとの考えを示した。

一方、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のワイデル党首は、CDUが地上軍派遣構想を検討したこと自体が「好戦的」「危険で無責任」だとして強く批判した。閣内からも、ウクライナに軍隊を派遣すれば「おそらくわれわれの手に余るだろう」(ワーデーフル外相)と警戒する声が上がっている。

ドイツではナチス政権時代の過去や近年のアフガニスタンとマリへの派兵が広く失敗と見なされていることから、軍の海外派遣に対して強い不安がある。政策当局者はドイツ軍への過剰な負担や、核保有国との直接対決に巻き込まれるリスクを懸念している。

RTL/ntvが委託したフォルサの調査によると、ドイツ人の49%が自国兵士の欧州平和維持軍への派遣を支持する一方で、45%が反対している。英国とフランスでは賛成が反対を大きく上回っている。

旧東ドイツ地域では特に海外派兵に懐疑的な見方が強い。ザクセンアンハルト州のCDU指導者スフェン・シュルツェ氏は独誌シュテルンに対し、独連邦軍は部隊を展開できる状況にはほとんどないとの見解を示した。「強固な欧州安全保障体制を構築することの方がはるかに重要だ」と述べ、「それ以外での方法ではドイツも連邦軍も手に負えないだろう」と警告した。

CDUと連立を組む社会民主党(SPD)は伝統的にロシアとの関係を重視してきた経緯もあり、ウクライナへの軍隊派遣には一層慎重だ。SPD左派のシュテグナー議員は独誌シュピーゲルに、「ドイツはこの問題に介入すべきではない」とし、「この地域へのドイツ軍の展開は、歴史的な理由からも極めて困難だ」と語った。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米有権者、民主主義に危機感 「ゲリマンダリングは有

ビジネス

ユーロ圏景況感3カ月連続改善、8月PMI 製造業も

ビジネス

アングル:スウォッチ炎上、「攻めの企業広告」増える

ビジネス

再送-ユニクロ、C・ブランシェットさんとブランドア
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自然に近い」と開発企業
  • 4
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 5
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 6
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 7
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 8
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中