ロシア軍、ウクライナ東部で突如攻勢 米ロ会談前に占領地域拡大か

ロシア軍がウクライナ東部の鉱山都市ドブロピリャの東方で攻勢をかけ始めた。突発的とも言える動きで、15日の米ロ首脳会談を前に占領地域を広げ、ウクライナに領土割譲圧力をかける可能性がある。ドネツク州内でロシア国旗を掲げる兵士、ロシア国防省が12日発表したビデオより(2025年 ロイター/Russian Defence Ministry)
[モスクワ 12日 ロイター] - ロシア軍がウクライナ東部の鉱山都市ドブロピリャの東方で攻勢をかけ始めた。突発的とも言える動きで、15日の米ロ首脳会談を前に占領地域を広げ、ウクライナに領土割譲圧力をかける可能性がある。軍事ブロガーらは、この動きを食い止めなければウクライナにとって深刻な事態になり得ると指摘した。
ウクライナの軍事ブログ「ディープステート」が公開している地図によると、ロシア軍はドネツク州の完全制圧を目指し、ここ数日に2方向で最大10キロメートル北へ急速に進攻。ウクライナ側の要衝ポクロフスクとコスティアンティニウカ方面の前線の3つの村近くまで進んだと指摘した。
フィンランドに拠点を置くブラックバードグループの軍事アナリスト、パシ・パロイネン氏は、ロシア軍がこの3日間でウクライナ軍の境界線を越えて約17キロまで進軍し、状況が急速に悪化したと述べた。
元ウクライナ軍将校で、「フロンテリジェンス・インサイト」を通じてこの戦況を分析している「Tatarigami_UA」氏は、ロシア軍の動きを早期に阻止しなければ危険なレベルまでエスカレートする可能性があるとの見方を示した。
同氏は「これは極めて重要だ。2014年と15年にロシアは交渉を有利に進めるために大規模な攻勢を仕掛けた。現在の状況は深刻だが、一部が示唆するような崩壊には程遠い」とXに投稿した。
ロシア政府の顧問を務めたセルゲイ・マルコフ氏は、ロシア軍の進軍は、ウクライナの兵士不足による「前線の部分的な崩壊」のおかげだと述べた。同氏は証拠を示さず、ウクライナが進撃を阻止するため精鋭部隊を再配置したと述べた。ロシアのインタファクス通信やウクライナの軍事ブロガーも同様の指摘をした。
マルコフ氏は「この進展は、交渉中のプーチン、トランプ両大統領への贈り物のようなものだ」と述べ、ロシア軍が最終的にドネツク州全体を占領するのを防ぐため、ウクライナには一部領土を手放す圧力が強まる可能性がある指摘した。
ウクライナのアゾフ旅団の参謀長だったボフダン・クロテビッチ氏は11日遅くのXへの投稿で、ロシア軍が進撃している地域の前線は「完全な混乱状態」にあると述べ、「固定した交戦ラインは存在しない」と指摘した。