マクロスコープ:ガソリン減税に現実味、モノの価格抑制は見通せず

7月の参議院選挙で与党が過半数を割ったことで、ガソリンの暫定税率廃止が現実味を帯びてきた。都内で2021年6月撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Tamiyuki Kihara
[東京 1日 ロイター] - 7月の参議院選挙で与党が過半数を割ったことで、ガソリンの暫定税率廃止が現実味を帯びてきた。与野党は足並みをそろえ、物価高対策の一環として秋に予定する臨時国会での法案成立を目指すことで合意した。専門家は廃止の経済効果について、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の押し下げを指摘する。ただ、燃料費減に伴う物流コストの削減で、モノ全体の価格抑制につながるかは見通せない。
暫定税率は1974年のオイルショックを受けて導入された。ガソリン税に1リットルあたり25.1円が上乗せされている。軽油引取税の上乗せ分は同17.1円だ。
廃止された場合の経済効果について、SMBC日興証券シニアエコノミストの宮前耕也氏は、現行のガソリン補助金がなくなるとの前提で「レギュラーガソリンで1リットルあたり(現在の価格水準から)約17円下がるとみられる」と試算。家計に占める燃料費の割合が下がり、「全体でコアCPIが0.2ポイントほど押し下げられ、実質賃金が0.2ポイント伸びるのと同様の効果があるだろう。自動車を普段から使用する人ほど恩恵は大きくなる」とみる。
<モノの価格は下がるか>
一方、運送企業の大半がトラック燃料に使うとされる軽油の暫定税率について、ある野党の国会対策委員長はロイターの取材に「軽油は地方財源になっている。年度途中なので来年度からの廃止を目指す」と語り、それまでは現行の補助金でつなぐ考えを示した。
先の参院選で一部の野党は、軽油が下がればモノ全体の価格を抑制する効果があると主張していた。ただ、軽油が下がったとしても、ただでさえ厳しい競争環境に置かれる物流企業に運送費を下げる「余力」はないと見られる。
荷主企業や物流企業で構成する日本ロジスティクスシステム協会によると、2024年度の物流コスト調査(有効回答191社)で、荷主企業の売上高に占める物流コスト比率は平均で5.44%と、前年度から0.44ポイント上昇した。ただ、2年連続で回答した140社に限ってみると、前年度比マイナス0.20ポイントとなる。物価高に伴う荷主企業の売上高増加に対し、物流コストの伸びが追い付いていない状況がうかがえる。
特に中小の物流企業の価格転嫁が十分にできていないとみられ、同協会の北條英理事は「1990年の『物流2法』による規制緩和以降、そもそも物流企業は慢性的な過当競争にさらされている」と指摘。「軽油の暫定税率が廃止されても、輸送費を値下げする余力のある企業は少ないだろう」と話す。
<現場から「輸送費は下げない」の声>
実際、厳しい経営状況を訴える声もある。大阪府にある物流企業の担当者は匿名を条件に、暫定税率が廃止された場合でも「輸送費を下げることはしない」と語った。
同社は大阪府を中心に約130台のトラックを稼働する。月の燃料費は500万円ほどだ。軽油の価格低下の恩恵は少なくないが、同担当者は「長らく荷主から輸送費の値下げを求められ続けてきた」とし、「もしコスト削減ができたら、人件費やトラックの修理、買い替えの費用に充てたい」と話した。
<「赤字国債発行と同じ」との指摘も>
廃止には財源の課題も指摘される。加藤勝信財務相は7月29日の閣議後会見で、ガソリンと軽油を合わせて「(年間)1.5兆円という税収減に対して財源面からどう対応していくか」と述べた。
前出の宮前氏も「財源がどこにあるのかが実はよくわからない」と話す。他の税収の増加分を財源に充てた場合、国債の償還費が削られることにもなりかねず、「別の増税をするか、歳出カットをしなければ、実質的には赤字国債発行と同じことだ」と指摘。「臨時国会に向けた与野党の財源議論に注目している」という。
廃止をめぐっては、今年の通常国会で野党側が法案を提出。当時は与党が多数を占めた参院で採決に至らず、廃案となった経緯がある。
7月の参院選での与党大敗を受け、与野党の国対委員長は7月30日、「今年中のできるだけ早い時期」の廃止を目指すことで合意。8月1日、野党7党は改めて法案を国会に提出した。今後詳細な制度設計や財源などについて協議を進め、秋に予定される臨時国会で改めて成立を目指す構えだ。
(鬼原民幸 編集:橋本浩)
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