ニュース速報
ワールド

豪中銀、4年ぶり利下げ 追加緩和には慎重

2025年02月18日(火)16時43分

 オーストラリア準備銀行(中央銀行)は18日、政策金利のオフィシャルキャッシュレート(OCR)を25ベーシスポイント(bp)引き下げ、4.10%とした。利下げは2020年以来。写真はシドニー中心部の豪中銀の建物。2018年2月撮影(2025年 ロイター/Daniel Munoz)

[シドニー 18日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(中央銀行)は18日、約4年ぶりに利下げを決定した。インフレ抑制で進展があったとするものの、ブロック総裁は勝利宣言は時期尚早と述べ追加利下げの言質を与えなかった。

中銀理事会は、政策金利のオフィシャルキャッシュレート(OCR)を25ベーシスポイント(bp)引き下げ、4.10%とすることを決定した。利下げは2020年11月以来。

2024年第4・四半期のコアインフレ率が3.2%に鈍化したことから、市場では25bpの利下げが広く予想されていた。

中銀は声明で「本日の政策決定はインフレに関する歓迎すべき進展を認識したものだが、理事会はさらなる政策緩和の見通しについて引き続き慎重だ」と表明。

「労働市場が従来考えられていたよりも幾分タイトになっている可能性を示唆している」とし、雇用の強さに起因するインフレ上方リスクを指摘した。「理事会の評価は、金融政策は制約的であり、今回のキャッシュレート引き下げ後もそうあり続けるというものだ」とした。

この日発表した経済予測では、基調インフレは従来予想よりも速いペースで下落するものの、労働市場の逼迫で物価上昇圧力が長引くとし予想。失業率予想は引き下げた。

声明は、この予測を踏まえ「金融緩和が早すぎれば、ディスインフレが停滞し、インフレ率が目標レンジの中間値を超えて落ち着く可能性がある」と指摘した。

<市場の利下げ観測をけん制>

中銀のブロック総裁は会見で、インフレに対する勝利宣言は時期尚早で、追加利下げするにはインフレ抑制にさらなる進展が見られる必要があるとの認識を示した。

市場が年内あと2回の25bp利下げの可能性を織り込んでいることについて「本日の決定は、市場が示唆する通りの利下げが将来行われることを意味するわけでないことを明確にしておきたい」と述べ、市場の織り込みは「非現実的」と指摘した。

「理事会は将来について決定を下す前に、インフレが引き続き低下していることを示すさらなるデータを必要としている」と述べた。

スワップ市場が示唆する4月の追加利下げの確率は18%にとどまるが、5月利下げはほぼ100%織り込んでいる。

コモンウェルス銀行の豪経済部門責任者ガレス・エアド氏は、今回の利下げは「景気のアクセルを踏むというより、ブレーキを緩めることに近い」と指摘。「失業率が低いということは、政策金利の正常化をゆっくり進めることが可能ということになる」と述べる一方、労働市場が悪化すれば4月利下げの可能性も排除できないとした。

キャピタル・エコノミクスのAPAC(アジア太平洋地域)担当シニアエコノミスト、アビジット・スリヤ氏は、現在の緩和サイクルではあと2回しか利下げを行わないだろうと予想。「中銀は、家計消費とより広範な経済活動の回復を引き続き見込んでおり、インフレ上昇圧力が中期的に持続する可能性が高いと考えている」と述べた。

利下げを受け、国内主要4行も預貸金利の引き下げを発表した。

チャーマーズ財務相は会見で、利下げは国民にさらなる救済を提供する「歓迎すべき一歩」だと述べた。

オーストラリアでは5月17日まで選挙が実施される予定。苦戦が予想されるアルバニージー首相が利下げを追い風に早期の選挙を実施するとの観測も出ている。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、和平交渉の用意あるが領土は譲らず=ゼレ

ビジネス

米景気減速リスクは誇張、資金流入続く 金融大手幹部

ワールド

日中外相が電話会談、ハイレベル交流重要と中国指摘 

ワールド

対米投融資1号案件、どの程度かかるか言えるめどはな
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下にな…
  • 5
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 6
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 7
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 8
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 9
    中国のレアアース輸出規制の発動控え、大慌てになっ…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中