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アングル:インド中間層、インフレで支出切り詰め 経済成長圧迫か

2024年11月16日(土)08時16分

 インドではしつこい高インフレが中間層の家計を締め付けており、都市住民はクッキーからファストフードに至るまで、あらゆる支出を切り詰めている。2022年12月、ニューデリーで撮影(2024年 ロイター/Anushree Fadnavis)

Praveen Paramasivam Shivangi Acharya

[チェンナイ/ニューデリー 13日] - インドではしつこい高インフレが中間層の家計を締め付けており、都市住民はクッキーからファストフードに至るまで、あらゆる支出を切り詰めている。消費の減速は、同国経済の高成長を脅かしかねない。

都市部の消費は過去3─4カ月にわたって減速。大手消費財企業の収益を圧迫しているだけでなく、インドの長期的な経済的成功の構造にも疑問を生じさせている。

新型コロナウイルスのパンデミックが収束して以来、インドの経済成長は主に都市部の消費がけん引してきたが、現在その状況が変わりつつあるようだ。

飲料・食品大手ネスレ・インディアのシュレッシュ・ナラヤナン会長は「超富裕層は消費しているが、消費はまるで流行遅れになっているかのようだ。かつては中間層が存在し、当社のような日用消費財(FMCG)企業の大半はそこを相手に事業を展開していた。その層が縮小しているようだ」と語る。

キットカットなどを製造するネスレ・インディアは、パンデミックに見舞われた2020年4─6月期以来、初めて四半期決算が減収となった。

インドの中間所得層について公式の定義はないが、概算では人口14億人の3分の1を占めるとされている。

中間層は経済的にも政治的にも重要な層とみなされており、今年の選挙でモディ首相が苦戦したのは中間層の不満が大きな要因だったとみられている。

アジア第3位の経済大国であるインドは、2024年4月─25年3月の会計年度に7.2%と、主要国の中で最も高い成長率が予想されている。

しかし、こうした楽観的な予測とは裏腹に、家計部門では急激な減速の兆しがみられる。

航空便の予約、燃料販売、賃金などの指数から集計したシティバンクの指数によると、都市部の消費は今月、2年ぶりの低水準に落ち込んだ。

シティのチーフ・インド・エコノミスト、サミラン・チャクラボルティー氏は「一部の低下は一時的なものかもしれないが、マクロ経済をけん引する主要な要因は好ましくない状況が続いている」と述べた。

シティのデータによると、インド上場企業のインフレ調整後の賃金コスト上昇率(都市部住民の賃金を示す代理指数)は、今年9月までの3四半期全てにおいて2%を割り込み、過去10年間の平均値4.4%を大幅に下回っている。

チャクラボルティー氏は、都市部の消費に影響を与えた主な要因として、貯蓄の減少や個人向けローンの規制強化に加え、実質賃金の低い伸びを挙げる。

過去12カ月間の消費者物価指数(CPI)上昇率は平均5%だったが、天候不順による野菜や穀物、その他の必需品の価格高騰により、食品価格の上昇率は8%以上で推移した。10月にはCPI上昇率が14カ月ぶり高水準の6.2%を記録し、食品価格は10.9%急騰した。

ノムラは先週のメモで、8月から11月までの祝祭シーズン中の小売売上高は前年同期比で約15%増と、昨年のペースの半分程度にとどまったと指摘している。

夫の月給3万ルピー(約5万5000円)で生活しているラジワンティ・ダヒヤさん(60)は「このお祭りのシーズン中、私たちはまったくお金を使っていない。貯蓄はほとんど底を突いた」と嘆いた。

<縮小する中間層>

シティやIDFCファースト銀行のエコノミストは、都市部の消費低迷により、7─9月期の国内総生産(GDP)成長率がインド準備銀行(中央銀行)の予測7%を下回ると見込んでいる。

こうした見方から消費者関連株は売り込まれ、日用消費財株(FMCG)指数は10月1日以降13%下落。NSE指数(ナショナル証券取引所に上場する50銘柄で構成)の7.4%安に比べて大幅な下げとなっている。

FMCG指数を構成する15社のうち、7─9月期に販売数量の伸びが増加したのは1社のみだった。

大都市の消費者はヘアオイルから紅茶まで、ブランド品をより安価なノーブランド品に切り替えている。

消費者は外食も控えており、マクドナルド、バーガーキング、ピザハット、KFCなどのファストフード・チェーンでは既存店売上高が減少した。

バーガーキングを運営するレストラン・ブランズ・アジアのラジーブ・バルマン最高経営責任者(CEO)は、客足は途絶えていないが、より安いメニューが選ばれるようになったと言う。同社は四半期の既存店売上高が3%減少した。

ムンバイの企業で営業担当幹部を務め、中産階級を自認するアビナッシュ・クラストさん(37)は「月々のやりくりのため、お得な割引がある財布に優しい店を好んで利用している」と語った。

ロイター
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