ニュース速報
ワールド

ノルウェーなど3カ国、パレスチナ国家承認 イスラエルは大使召還

2024年05月23日(木)09時11分

 5月22日、ノルウェーのストーレ首相は、パレスチナ国家を承認する意向を示した。写真はノルウェー・オスロで昨年11月撮影(2024年 NTB/Ole Berg-Rusten/via REUTERS)

[ダブリン/オスロ/マドリード/エルサレム 22日 ロイター] - アイルランド、スペイン、ノルウェーは22日、パレスチナを28日付で国家として承認すると発表した。その上で、他の西側諸国による追随を期待するとした。一方、イスラエルは反発し、3カ国の駐在大使に即時帰国を指示した。

3カ国は、パレスチナ国家承認はパレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘休止に向けた取り組みを加速させることが目的としている。

イスラエルの主要な同盟国である米国は、パレスチナ国家は「一方的な承認」ではなく、当事者間の直接交渉によって実現されるべきとの立場を堅持。国家安全保障会議(NSC)の報道官は「(バイデン大統領は)2国家解決の強力な支持者だ」と述べた。

ノルウェーのストーレ首相は記者会見で「何万人もの死傷者が出ている戦争のさなかにあって、イスラエル人とパレスチナ人双方に安全な住まいを提供できる唯一のもの、すなわち平和に共存できる2つの国家を存続させなければならない」と語った。

ノルウェーは、両国の境界は1967年以前の国境に基づいて設定され、エルサレムを両国の首都にすべきとした一方、こうした国境に関するノルウェーの認識が最終的な国境を巡る交渉に悪影響を与えてはならないとした。

これに対し、イスラエルのネタニヤフ首相は声明で、パレスチナ国家承認は「テロリズムへの報酬」と指摘。「これはテロ国家になる。(ハマスによるイスラエル奇襲が起きた昨年)10月7日の大虐殺を何度も繰り返そうとするだろう。われわれがそれを認めることはない」とした。

また、「テロリズムに報いることで平和がもたらされることもなければ、われわれがハマス打倒をやめることもない」と表明した。

<パレスチナ自治政府などは歓迎>

3カ国の発表はパレスチナ自治政府およびハマスから歓迎された。

国連加盟193カ国のうちロシアや中国、インドなどを含む約144カ国がパレスチナ国家を承認。ただ欧州連合(EU)加盟27カ国で承認しているのはほんの一握りで、その大半が旧共産主義国となっている。

英国、オーストラリア、スロベニア、マルタも地域の恒久的な平和には2国家による解決が不可欠だとして、過去数カ月においてパレスチナ国家を承認する意向を示している。

一方、ドイツは22日、さらなる対話が必要との見解を示したほか、フランスは条件がまだ満たされていないとした。

この問題で欧州諸国の立場は分かれており、スウェーデンは10年前に承認したが、フランスは和平に向けて効果的な手段とならない限り承認する計画はないとしている。

ノルウェーはこれまで、和平プロセスに寄与する場合にのみパレスチナ国家を承認するとし、米国と軌を一にしてきた。米国と緊密な関係にあり、数十年にわたりイスラエルとパレスチナ間の和平仲介にも努めてきた。

<イスラエル世論に重要な影響も>

欧州3カ国による今回の動きは、ガザ戦争における民間人犠牲者の問題などにより、イスラエルが国際的に孤立を深めていることを示した。

1990年代の「オスロ合意」を仲介したノルウェー外交チームの一員を務めたヤン・エーゲランド氏は、今回の発表はパレスチナ地域の占領を終わらせなければならないというイスラエルへのメッセージだと述べた。

イスラエル外務省の元幹部で、ネタニヤフ政権に批判的なアロン・リエル氏はロイターの電話取材に応じ、3カ国の動きはイスラエル世論に重要な影響を与える可能性があると指摘。国際社会でイスラエルとパレスチナの地位を同等にすることは「イスラエルの現指導部にとって悪夢」だと語った。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、司法省にエプスタイン氏と民主党関係者の

ワールド

ロ、25年に滑空弾12万発製造か 射程400キロ延

ビジネス

米ウォルマートCEOにファーナー氏、マクミロン氏は

ワールド

米政権特使、ハマス副代表と近日中に会談へ=米紙
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 9
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中