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アングル:学校再開目指すウクライナ、シェルター建設など難題も

2022年09月03日(土)08時03分

 8月29日、ウクライナ全域では当局がロシア軍によって破壊された学校施設の修復や、防空シェルターの建設を進めている。約600万人に上る学齢児童が、9月からの新学期にオンラインないし対面方式で授業に戻れるようにするためだ。写真はキーウ近郊イルピンで、ロシア軍による攻撃を受けた学校の壁。10日撮影(2022年 ロイター/Gleb Garanich)

[キーウ 29日 ロイター] - ウクライナ全域では当局がロシア軍によって破壊された学校施設の修復や、防空シェルターの建設を進めている。約600万人に上る学齢児童が、9月からの新学期にオンラインないし対面方式で授業に戻れるようにするためだ。

戦争が及ぼす社会的・経済的影響は長期にわたる。ウクライナ最大のオンライン学習プラットフォーム「プロメテウス」の共同創業者も「ロシアの侵略はウクライナの教育システムに甚大な影響をもたらすだろう」と認めた。そうした中で政府としても、早期の学校再開は最優先課題の1つと言える。

今はロシア軍に制圧されている東部ルガンスク州の都市・リシチャンスク。中学生の息子が通っていたここの学校が爆撃で跡形もなくなったことを思い浮かべるたびに涙するスビトラーニャさんは、それでも息子が勉強する場を確保する決意だ。

彼の新たな学びの場となるキーウ近郊のイルピンにある学校を訪れたスビトラーニャさんは「この地でわたしたちは、より良い生活を送れると思う。最も大事なのは子どもが学習できることだ」と言い切った。

ウクライナ教育科学省によると、2月24日にロシアが侵攻して以来、砲撃ないし爆撃を受けた国内の教育施設は2300カ所近くに達し、286カ所が完全に破壊された。発表された子どもの死者は350人強、負傷者は586人だが、実際はずっと多い可能性がある。

政府が学校再開を積極的に推進するのは、それによって女性が職場に復帰できるというのも理由の1つだ。しかし、内務省が国内の保育園から大学まで2万6000カ所の教育施設を調査した結果、対面授業に不可欠な防空シェルターか、それに類する防護設備を備えているのは全体の41%にとどまっていることが分かった。

この数字は数カ月前に比べれば400%も上がっており、近いうちにもっと多くのシェルターが完成してもおかしくない。とはいえ、前線付近の普及率はなお低い。例えば、ロシア軍が最近砲撃を強化している南部の都市・ミコライウでは、シェルターがある学校は16%に過ぎない。

非政府組織(NGO)セーブ・ザ・チルドレンのウクライナ担当ディレクター、ソニア・クーシュ氏の話では、その結果として数百万人の児童や若者がリモート学習の継続を強いられ、さらに10代の退学率の高さなど新型コロナウイルスのパンデミックに伴う2年間の学校閉鎖で起きた問題が一層深刻になっている。

<国家の未来>

学業の中断は、その後の人生で得られる所得の低下など長期的にさまざまなマイナスをもたらす。世界銀行は今年2月、新型コロナウイルスに関連して世界中で学校が7カ月間休みとなったことで、迅速な対策が講じられなければ「学習面での貧困」に陥る生徒の比率が約70%まで高まると見積もった。

世銀の東欧地域諸国担当ディレクターは「児童が教育を受けられないと、それはずっと後まで恒常的な負の遺産となり、取り返すのにかかる時間と労力、対価は増大するだろう」と指摘した。

ウクライナはインターネットの接続環境が抜群だが、クーシュ氏によると、特に前線地域の教育当局はもっと多くのノートパソコンや各種端末が欲しいと訴えている。

さらに対面授業が再開されたとしても、生徒は環境に順応するための追加的な支援が必要になるし、一部では分散登校を迫られるかもしれない。

イルピンの学校の責任者はロイターに、校内にある防空シェルターの収容可能人数は300人と、全校生徒2000人の一部だけだと明かした。

西部にあるリビウ国立大学のメリニク学長は、戦争によって生じた学習期間の空白は「ウクライナにとって悲劇だ」と嘆きつつ、大学側は教員がオンライン授業をより円滑に進めるのを支援するプログラムを設け、何千人もの学生は自発的に避難民の手助けに従事していると述べた。

ウクライナ元財務相のナタリー・ジャレスコ氏は、教育を復活させれば、戦争後欧州各地に逃げ出した何百万人もの女性や子どもたちの帰国を後押ししてくれると主張。「彼らは将来の労働力であり、実質的に国家の未来そのものだ」と語った。

<トラウマ>

子どもたちが受けた心的外傷(トラウマ)への対応も、大きな課題になる。

臨床心理士のオレーナ・ロマノワさんは、リビウに滞在する子どもを含めた避難民たちに寄り添い、色とりどりの動物のぬいぐるみを使って子どもたちの死や破壊の記憶を癒そうとしている。

ロマノワさんは「何はともあれ時間は過ぎていく。われわれは笑わなければならない。(彼らの)多くの記憶はこのおぞましい戦争に関するものだろうが、われわれは彼らの人生をより明るくしようと努力している」と説明した。

ウクライナのNGOのBASE UAは美術館などのアートを利用し、避難している子どもたちが持つ戦争の記憶を薄めようとしている。

ロシアが制圧したヘルソン州オレシュキーから逃げてきたある14歳の少女は、BASE UAが企画したカルパチア山脈でのサマーキャンプのおかげで、戦争の現実からほっと一息つけたと喜んだ。だが、やはり故郷の恋しさは募る。「クラスメートとのやり取りがほとんどなくなってしまったと感じている。地元に帰って学校で彼らと会いたいし、何もかもが普通に戻ってほしい」と訴えた。

(Andrea Shalal記者、Ivan Lyubysh-Kirdey記者)

*動画を付けて再送します。

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