ニュース速報

ワールド

米英豪、中国念頭にインド太平洋で新安保協力 豪の原潜配備支援へ

2021年09月16日(木)14時15分

 米国、英国、オーストラリアは、インド太平洋地域における安全保障上の協力関係を構築する。各国の首脳が米国時間15日に開催されたオンラインでの三者会談で発表した。ホワイトハウスで撮影(2021年 ロイター/Tom Brenner)

[ワシントン/キャンベラ/ウェリントン 16日 ロイター] - 米国、英国、オーストラリアは、インド太平洋地域における安全保障上の協力関係を構築する。各国の首脳が米国時間15日に開催されたオンラインでの三者会談で発表した。同地域での中国の影響力拡大に対抗するのが狙いとみられる。

この枠組みの下、米国と英国はオーストラリアに原子力潜水艦を配備する技術と能力を提供する。各国首脳は豪州が核兵器を配備することはないが、将来の脅威に備え艦艇に原子力推進システムを用いると強調した。

バイデン米大統領は「われわれはインド太平洋の平和と安定を長期的に確保する必要性を認識している」と表明。「われわれは地域の現在の戦略的環境と、今後のその発展可能性の双方に対処できるようになる必要がある。なぜならわれわれ各国と世界の将来は向こう数十年永続的に繫栄する、自由で開かれたインド太平洋にかかっているためだ」と述べた。

モリソン豪首相は、潜水艦は米英との緊密な協力を通じてアデレードで建造されると述べた。また、核兵器は保有しないと表明。「引き続き、核不拡散の義務を全面的に果たしていく」と語った。

ジョンソン英首相は、豪州がこの技術を獲得することは極めて重要な決断だとし、世界をより安全にするとの認識を示した。

<在米中国大使館が反発>

3カ国首脳は中国を名指ししておらず、発表に先立って記者団にブリーフィングを行った米政権高官も、今回の協力関係は中国への対抗を目指したものではないとしている。

ただ、在米中国大使館は「(各国は)第三者の利益を対象としたり、損なったりする排他的なブロックを構築すべきではない」と反発。「特に、彼らは冷戦思考とイデオロギーに関する偏見から抜け出すべきだ」とした。

米国の元国家情報長官、ジェームズ・クラッパー氏はCNNに対し、豪州経済が中国に依存していることを考慮すれば豪州は大胆な決断をしたと指摘。「中国側は間違いなくこれを挑発的と見なすだろう」と付け加えた。

発表に先立ってブリーフィングを行った米当局者によると、バイデン大統領は9日の中国の習近平国家主席との電話会談で今回の協力関係については「いかなる具体的な言葉でも」言及しなかったが、「インド太平洋で力強い役割を果たすわれわれの決意を強調」したという。

米政府当局者は、今回の協力関係構築について、豪州への核兵器提供を伴うものではないと強調した。潜水艦に核兵器は搭載されないが、オーストラリア海軍がより静かに、より長く活動できるようになり、インド太平洋での抑止力の高まりにつながるという。

また、「AUKUS」と呼ばれる今回のパートナーシップはAI(人工知能)や量子技術などの分野での協力も含まれるという。

バイデン大統領は、各国政府は「労働力から訓練要件、生産スケジュールまで、このプログラムのあらゆる要素を決め」、不拡散コミットメントの全面順守を確実にするため、18カ月の調査期間に入ると表明した。

英国によると、最初の潜水艦をできるだけ早期に引き渡すことを目指し、18カ月の間にどの国や企業が何をするのか詳細を練るという。

米当局者は豪州が原子力潜水艦をいつ配備するのか、何隻建造されるのかについては明らかにしなかった。ただ、豪州が原子力インフラを何ら保有していないため、数年にわたる持続的な努力が必要になると述べた。

一方、豪州は16日、原潜8隻の開発を目指すと表明した。

<NZは原潜の領海入り認めず>

ニュージーランド(NZ)のアーダーン首相は16日の記者会見で、長年にわたる自国の非核政策により、オーストラリアの原潜が自国の領海に入ることは認められないと述べた。

米英豪の新安保協力についてモリソン首相と昨夜話したことを明らかにした上で、「密接に協力するパートナー国がわれわれの地域に目を転じたことは喜ばしい」としつつ、1984年の非核ゾーン政策の下、NZ領海内で原潜は認められないとした。

また、NZが米、英、カナダ、豪州と構成する、安全保障上の機密情報を共有する5カ国「ファイブアイズ」や、防衛問題での豪との密接なパートナーシップを含む既存の関係は変わらないと述べた。

中国はNZにとって最大の貿易相手。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

対ロ軍事支援行った企業、ウクライナ復興から排除すべ

ワールド

米新学期商戦、今年の支出は減少か 関税などで予算圧

ビジネス

テマセク、欧州株を有望視 バリュエーション低下で投

ビジネス

イタリア鉱工業生産、5月は前月比0.7%減に反転 
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 10
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中