ニュース速報

ワールド

アングル:米下院選、陰謀論「Qアノン」信奉者が当選も

2020年10月31日(土)08時09分

 米下院はこのほど、トランプ大統領をあがめる陰謀論「Qアノン」の非難決議を採択したが、11月3日の下院選では、複数のQアノン信奉者が当選する可能性がある。写真はQアノンのTシャツを着るトランプ氏の支持者、資料写真、9月撮影(2020年 ロイター/Elijah Nouvelage)

[ワシントン 26日 ロイター] - 米下院はこのほど、トランプ大統領をあがめる陰謀論「Qアノン」の非難決議を採択したが、11月3日の下院選では、複数のQアノン信奉者が当選する可能性がある。

非営利団体メディア・マターズによると、11月3日の議会選に出馬している候補者のうち25人以上はQアノンの信奉者か、Qアノンの陰謀論をネット上に拡散している。2人は無所属、残りは共和党候補という。

このうち少なくとも1人は下院選で当選するとみられている。もう1人の候補も当選の可能性が十分にある。

連邦捜査局(FBI)はQアノンを国内テロの脅威と認識している。

Qアノンは「Q」と名乗る人物がネット上で流す根拠のない陰謀論で、2017年から始まった。民主党の有力政治家、ハリウッドのスター、「闇の国家」連合が児童売買春に関与しており、トランプ大統領が極秘でこうした勢力と戦っている、といった根拠のない情報を流している。

Qアノンの信奉者は、敵対する政治勢力を中傷する目的で、こうした事実無根の情報をネット上で拡散させているとみられる。

<ジョージア州とコロラド州で当選の可能性>

ジョージア州北西部の選挙区では、Qアノン信奉者の右派の中小企業オーナー、マージョリー・グリーン氏(46)が下院選に出馬。対抗馬だった民主党候補が選挙戦から撤退したため、当選するとみられている。

グリーン氏は2017年の動画で「Qは愛国者(patriot)だ」と宣言している。

共和党支持者の多いコロラド州西部の選挙区でも、保守系のポッドキャストでQが「本当」であることを期待すると今年春に発言したローレン・ボーバート氏(33)が勝利する可能性がある。同氏は銃を持つ権利を訴える活動家だ。

グリーン氏とボーバート氏は、ともに共和党の女性新人候補で「社会主義に歯止めをかける」ことを公約に掲げている。今年夏に共和党候補に確定した後は、Qアノンに関する過去の発言とは距離を置く姿勢を示している。

トランプ大統領は、今年8月にホワイトハウスで行った共和党全国大会の演説に2人を招待した。

ソーシャルメディアは、Qアノンの取り締まり強化に乗り出しているが、モーニング・コンサルトが最近実施した世論調査では、共和党支持者の38%が、Qアノンの陰謀論の少なくとも一部を信じているという結果が出ている。

Qアノンが勢力を拡大する前の2016年には、ワシントンのピザ屋が児童売春組織の拠点になっているという陰謀論を信じた男が、店内で発砲する事件が起きた。

トランプ大統領はQアノンを拒否しておらず、時には愛国的だと称賛し、Qアノン関連のコンテンツを頻繁にリツイートしている。

だが、一部の共和党関係者はQアノンを公然と非難。共和党の元下院議長ポール・ライアン、ジョン・ベイナー両氏と働いていたブレンダン・バック氏は「陰謀論を受け入れるような政党であり続けてはならない」と語った。

<グリーン氏に居場所はあるか>

共和党のケビン・マッカーシー下院院内総務も8月、フォックス・ニュースで「共和党にはQアノンの居場所はない」と、Qアノンを公然と非難。

ただ、ジョージア州の選挙区に出馬しているグリーン氏については、Qアノンと距離を置いており、チャンスを与えるべきだとケーブルチャンネル「Cスパン」に語っている。

政治サイトのポリティコによると、グリーン氏は2017年の動画で「悪魔を崇拝する小児愛者の国際陰謀団を排除する一生に一度のチャンスがある」と発言。

共和党の下院議員候補に確定した後は「(Qアノンは)自分の活動の一部ではなかった」とコメントしている。

ただ、下院が採択したQアノン非難決議については「無駄」であり、なぜ極左運動「アンティファ」を非難する決議を採択しないのか、とツイッターに投稿した。

<ウエートレスも銃を携帯>

コロラド州の選挙区に出馬しているボーバート氏は、Qアノンに同情的な姿勢を示しており、腰にピストルを下げた格好で選挙戦用の写真を撮影した。

同氏は新型コロナウイルス対策の行動規制に違反して、自ら経営するレストランの営業を継続。共和党の予備選では5期務めた下院議員を破った。

ボーバート氏のレストランは「シューターズ・グリル」として知られ、ウエートレスも銃を携帯している。店がある町の名前は「ライフル」だ。

ボーバート氏は5月、保守系のポッドキャストでQアノンについて「もし事実なら、この国にとって本当に素晴らしいことかもしれない」と発言。

共和党候補に確定した後は地元テレビに「自分は(Qアノンの)信奉者ではない」と距離を置く姿勢を示している。

同氏は選挙戦で民主党候補と対決するが、アナリストはこの選挙区では共和党の支持者が多いとの見方を示している。

(Susan Cornwell記者)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏が閣僚刷新検討 イラン戦争が打撃 選挙控

ワールド

商船三井のLPG船がホルムズ海峡を通過 日本関係2

ワールド

ドバイの米オラクル施設に迎撃破片が落下、負傷者なし

ワールド

トランプ政権による大学への人種データ開示命令を仮差
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 5
    イラン戦争は「ハルマゲドンの前兆」か? トランプ…
  • 6
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 7
    【写真特集】天山山脈を生きるオオカミハンター
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 10
    中国は「アカデミズムの支配」を狙っている? 学術誌…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 7
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 10
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中