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コロナ注視し「躊躇なく対策」、成長持続へ環境対応も 菅首相が所信表明

2020年10月26日(月)14時12分

 10月26日、菅義偉首相(写真)は所信表明演説で「新型コロナウイルスが経済に与える影響や内外の経済動向を注視しながら、躊躇(ちゅうちょ)なく必要な対策を講じる」と述べ、追加経済対策の年内編成に意欲を示した。写真は21日ジャカルタでの代表撮影(2020年/ロイター)

[東京 26日 ロイター] - 菅義偉首相は26日の所信表明演説で「新型コロナウイルスが経済に与える影響や内外の経済動向を注視しながら、躊躇(ちゅうちょ)なく必要な対策を講じる」と述べ、追加経済対策の年内編成に意欲を示した。成長戦略の柱に経済と環境を掲げ、グリーン社会の実現に最大限注力する方針も示した。

首相は冒頭、「新型コロナウイルスの感染拡大と戦後最大の経済の落ち込みという、国難の最中にある」との認識を示し、「大変重い責任を担うことになった」とした。その上で「社会経済活動を再開して経済を回復させていく」と決意を新たにした。

経済政策に関して菅首相は「今後もアベノミクスを継承し、さらなる改革を進めていく」と強調。雇用や事業継続を支える持続化給付金や無利子・無担保融資などの対策を続けるほか、「GoToキャンペーンで旅行、飲食、演劇やコンサート、商店街でのイベントを応援する」と述べた。

地方の活性化に向けて「当面の観光需要を回復させていくための政策プランを年内に策定する」とし、「地方の所得を増やし、消費を活性化させるため最低賃金の全国的な引き上げに取り組む」との考えも示した。

成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げ、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」との考えも表明した。次世代型太陽電池やカーボンリサイクルなどの革新技術を推進し、グリーン投資をさらに普及させる方針だ。エネルギー政策では「安全最優先で原子力政策を進め、安定的なエネルギー供給を確立する」との方針も示した。

コロナ禍で浮き彫りとなったデジタル対応の遅れに対しては「大胆な規制改革を実現し、ウィズコロナ、ポストコロナの新しい社会をつくる」との考えを示し、「各省庁や自治体の縦割りを打破し、マイナンバーカードについては今後2年半のうちに、ほぼ全国民に行き渡ることを目指す」と語った。

首相肝いりのデジタル庁創設では、来年の始動に向けて「民間の力を大いに取り入れ、早急に準備を進める」と述べた。

一方、今後のインフルエンザ流行に備え、「地域の医療機関で1日平均20万件の検査能力を確保する」としたほか、新型コロナのワクチンに関しては「安全性、有効性の確認を最優先に来年前半までにすべての国民に提供できる数量を確保し、高齢者や基礎疾患のある人、医療従事者を優先して無料で接種できるようにする」と語った。

2021年7月に開幕する東京オリンピック・パラリンピックを巡って「安全・安心な大会を実現するために今後も全力で取り組む」との考えも述べた。

海外との人的交流の必要性にも重ねて言及し、「入国時の検査能力を来月中に1日2万人に引き上げ、防疫措置を講じながらグローバルな経済活動を再開していく」と述べた。世界の国際金融センターを目指すための税制、行政サービスの英語対応、在留資格の緩和にも触れた。

社会保障分野では「所得制限を撤廃し、不妊治療への保険適用を早急に実現する」としたほか、「毎年薬価改定の実現に取り組むとともに、オンライン診療の恒久化を推進する」と述べた。高齢者医療の見直しにも言及した。

菅首相は「防災、減災、国土強靭化は引き続き大きな課題」との認識も示し、「省庁や自治体、官民の垣根を越えて災害の状況を見ながら国土強靭化に取り組み、災害に屈しない国土づくりを進める」と語った。

<拉致解決は引き続き最優先課題>

外交・安全保障分野に関しては「米国をはじめとする各国との信頼、協力関係をさらに発展させ、積極外交を展開していく」との決意を表明した。基軸となる日米同盟は「インド太平洋地域と国際社会の平和、繁栄、自由の基盤になる」と意義を強調した。

厳しい安全保障環境の中で「イージス・アショアの代替策、抑止力の強化についてあるべき方策を取りまとめていく」とした上で、沖縄の基地負担軽減にも取り組み、「辺野古移設の工事を着実に進める」との考えも述べた。

菅首相は拉致問題が「引き続き政権の最重要課題」との認識も示し、「条件を付けずに金正恩(朝鮮労働党)委員長と直接向き合う決意で、日朝平壌宣言に基づき拉致・核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解消し、不幸な過去を清算して北朝鮮との国交正常化を目指す」と語った。

首相は、ロシアとの北方領土問題に関しても「次の世代に先送りせず、終止符を打たなければならない」と強調した。

(山口貴也)

ロイター
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