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「骨太方針原案」を簡素化、基礎的財政収支の目標年度に言及せず

2020年07月08日(水)18時13分

 7月8日、政府は経済財政諮問会議を開催し、2020年度の「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる骨太方針の原案について議論した。今回は新型コロナウイルス対策に集中した内容となり、「新たな日常」への対応策がテーマとなった。写真は4月8日、東京で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

[東京 8日 ロイター] - 政府の経済財政諮問会議は8日、20年度の「経済財政運営と改革の基本方針」(いわゆる骨太方針)の原案を示した。

安倍晋三首相は、今年の骨太方針は新型コロナウイルス感染症の流行により、世界的な時代の転換点にあるとした上で、異例の局面にあると指摘。「骨太方針をコンパクトにメッセージ性の強い形でとりまとめ、内閣の経済財政政策の基本方針とすべく、策定作業に注力する」と述べた。

今回は新型コロナウイルス対策に集中した内容となり、「新たな日常」への対応策がテーマとなった。冒頭で「来年度概算要求の仕組みや手続きをできる限り簡素なものとすることと歩調を合わせ、記載内容を絞りこみ、今後の政策対応の大きな方向性に重点を置いた」とし、全体の記述量も例年から半減。財政再建に関連する経済財政一体改革の章も消え、基礎的財政収支(PB)の黒字化目標を明記しなかった。

現状の経済状況については「これまで経験したことのない、まさに国難ともいうべき局面に直面」しており、「きわめて厳しい状況」と表現した。

先行きは、「感染拡大防止策を講じつつ、社会経済活動レベルを段階的に引き上げていく」方針を盛り込む一方、「感染リスクがゼロにならない以上、直ちに経済や社会が元の姿に戻るというわけではない」との見方を示した。

経済財政運営については、「決してデフレに戻さない決意」を示したほか、感染症状況や経済動向、国民生活への影響を注意深く見極め、「今年度の予備費の活用を含め臨機応変に、かつ時機を逸することなく対応する」とした。

◎浮彫りとなったリスクと新たな動きは以下のようにまとめた。

ーデジタル化、特に行政分野での遅れ

ー経済機能など国の中枢機能の一極集中

ーリモートサービスの活用・定着

ーイノベーションの減速が顕著で、多くの分野で国際競争力が減退

ー非正規・フリーランス・中小・小規模事業など弱い立場へのしわ寄せ

ーデジタルトランスフォーメーションの加速に伴う、データ流通などの国際的寡占化

ーサプライチェーンの弱さ

◎取り組み課題は以下のようにまとめた。

ー医療体制強化

ー雇用の維持と生活下支え

ー消費などの国内需要喚起

(内需中心の回復を目指す。強力な価格インセンティブを講じたGoToキャンペーン、マイナポイント活用の消費活性策など) 

ー教育・医療のオンライン化

(オンライン診療について、診察から薬剤受け取りまでオンラインで完結する仕組みの構築など。教育ではデジタル教科書の使用できる時数の基準緩和)

ーデジタルニューディールなどの新たな日常の実現

ー東京一極集中型から多核連携型国づくりへの転換

ー新たな日常に向けた社会保障の構築

ー最低賃金の引き上げ

*内容を追加しました。

(中川泉 編集:青山敦子)

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