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焦点:北朝鮮悲願の高速鉄道、南北緊張緩和で実現するか

2018年09月02日(日)08時45分

写真は完成した庫岩ー畓村鉄道の橋。2018年5月KCNA提供(2018年 ロイター)

Ju-min Park and Jane Chung

[ソウル 30日 ロイター] - 北朝鮮を支配する金一族にとって、同国の主要都市や世界各地を最先端の鉄道で結ぶことは、長年の夢だった。

そして今、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、孤立する北朝鮮に対する国際的な締めつけが緩和する機会に乗じて、欧州や隣国韓国にも引けを取らないような高速鉄道ネットワークの建設計画を進めようとしている。

金委員長は、韓国やフランスなどから協力を得られないかを模索するよう政府高官に指示を下したと、事情に詳しい韓国の業者と北朝鮮外務省高官が明らかにした。

韓国の技術者やコンサルタントも、北朝鮮との鉄道建設プロジェクトに向けた構想を練り始めているという。

朝鮮半島をロシアや中国、そしてその先の地域と結ぶ、新たな鉄道建設は、地域の貿易や観光を発展させるための鍵だと南北両国は考えている。

10年以上ぶりとなる南北首脳会談が4月に開催されて以来、こうした鉄道建設に向けた期待を受けて、鉄道車両メーカーの現代ロテム<064350.KS>など、韓国の鉄道関連株が上昇している。

だが構想の実現には幾多の障害がある。

国連安全保障理事会の決議に違反して核兵器開発を進めている北朝鮮で事業を行うことに対しては、広範な制裁が科されている。そして、北朝鮮の不安定な電力インフラも懸念要因だ。

南北双方の政府関係者は、「非商業的な公共インフラ」を一定程度認める、という国連制裁の例外条項を適用することで、こうした鉄道計画が制裁から免れる可能性を期待している。

<フレンチ・コネクション>

北朝鮮の上級外交官は6月、鉄道建設におけるフランスとの提携を仏上院に申し入れ、具体的には高速鉄道TGVを製造した重電大手アルストムと、フランス国有鉄道(SNCF)を提携先の候補として名指しした。

「これらは、制裁の影響を受けない分野だ」と、パリの国連教育科学文化機関(ユネスコ)北朝鮮代表部のKim Yong Il氏が述べていたことが、これまで明らかになっていなかった発言記録で分かった。

韓国が2004年に建設した韓国高速鉄道(KTX)には、アルストムの技術を採用している。同鉄道は、北朝鮮の老朽化した鉄道と比べ6倍以上速い。

とはいえ、国連制裁決議がインフラをどう定義するかは、非常に不明確であり、フランスの鉄道各社は、北朝鮮と組む計画はない、とロイターに語った。

「北朝鮮を巡る国際的な情勢に鑑み、そのような協力は考えられない。SNCFとして、そのように回答した」と、同社の広報担当者は述べた。仏アルストムは、「(北朝鮮の)代表者とは誰とも接触を続けたり、議論したりしていない」と回答した。

<長年の夢>

金委員長の祖父で北朝鮮を建国した金日成主席は1994年、亡くなる1カ月前に、南北朝鮮を結び、中国やロシアへと続く鉄道の建設は、物資輸送で北朝鮮に年間15億ドル(約1674億円)の利益をもたらす可能性があると語った。

4月の南北首脳会談では、金委員長が、韓国の鉄道に対する敬意を公式に表明している。妹の金与正(キム・ヨジョン)氏や北朝鮮の代表団が、2月に平昌冬季五輪会場を訪れる際に利用した韓国の高速鉄道に畏敬の念を抱いた、と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に伝えたのだ。

5月訪朝した外国記者団は、北朝鮮の豊渓里(プンゲリ)にある核実験場の爆破を取材するため、約415キロの距離を鉄道で12時間かけて移動した。韓国のKTXであれば、同距離の移動にかかる時間は2時間半程度ですむ。

北朝鮮における高速鉄道の建設には、最低でも5年程度の工期と、最大200億ドル(約2.2兆円)の費用がかかる、と専門家や鉄道会社幹部はみている。

南北両政府は、2000年に行われた初の南北首脳会談の席で、朝鮮半島を縦断する鉄道の建設について議論している。

ロイターが閲覧した2015年12月発行の北朝鮮の投資パンフレットには、北朝鮮政府が、中国国境に近い新義州の経済特区振興のため、「国際高速輸送鉄道」の建設を目指していると記されている。

その計画には、首都を発着する鉄道の一部を「高速鉄道システム」に変更する案も含まれていた。

国営メディアを通じて2015年発表した声明で、金委員長は、平壌と首都近郊の新たな国際空港をつなぐ高速鉄道を作る必要があると表明した。

韓国や中国と平壌を高速鉄道で結ぶという、さらに野心的な考えも金委員長は抱いている。経済開発を担当する北朝鮮高官がそう語っていたと韓国実業家は明かした。

「金委員長は、切符販売による外貨獲得をもくろんでおり、彼の指示を受けた当局者が、国際コンソーシアム(共同事業体)設立を目指している」と、この実業家は話した。

<リスクとリターン>

韓国側も、このような提携が恩恵をもたらす可能性をみている。

朝鮮半島と中国やロシアを結ぶ南北鉄道は、貨物輸送の所要時間を半減させる可能性があり、韓国に巨額の通行料をもたらす、と政府系の鉄道関連団体は2015年予測している。

「南北鉄道を巡る過去の議論は、単純に分断された鉄道をつなげるだけのものだったが、今では、鉄道を実用的な形で近代化して運営し、経済的価値を生み出すことに主眼が置かれている」。韓国大統領の直属機関、北方経済協力委員会のメンバーであるAhn Byung-min氏はロイターにそう語った。

とはいえ、南北対話の初期段階では、北朝鮮における高速鉄道の建設は議論されていない、とAhn氏は言う。

「現実的に、それが議論されるのはもっと先の話だろう。巨額の資金と、複雑なロジスティックスが絡むからだ」

韓国は来年、北朝鮮の道路や鉄道の近代化などの経済協力事業として、5040億ウォン(約506億円)の予算を組んでいる。今年の同予算と比べ46%の増額となるが、鉄道分の内訳は明らかにしていない。

韓国のSKエンジニアリング・アンド・コンストラクション(SK E&C)のSeol Young-man最高経営責任者(CEO)は、高速鉄道と高速道路の建設案を韓国政府に売り込もうと準備を進めている、と述べた。

「北朝鮮に鉄道を建設して金正恩氏と経済協力を行うには、中国やロシアと競って主導権を握るための用意をしなければならない」と、同CEOはロイターに語った。

北朝鮮の中国国境地帯に水力発電所を建設する中朝の合同事業や、ロシア産石炭を北朝鮮の港に輸送するためのロシアによる鉄道計画は、どちらも国連制裁の例外として認められている。

それでも、北朝鮮との事業に対しては、同国の抱える秘密主義や慢性的な電力不足など、多くのリスクが残っている。韓国鉄道公社の李哲(イ・チョル)元社長はそう指摘する。

2006年当時、南北鉄道の復旧について北朝鮮当局者と議論した李氏は「南北の鉄道協力には、北朝鮮における鉄道の状態を把握することが大変良いだろうと考えた」と言う。

「しかし北朝鮮側は、それをほとんど軍事機密のように考えており、われわれに見せることはなかった」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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