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制裁下の北朝鮮、ロシア経由で日韓に石炭輸出=欧州情報筋

2018年01月26日(金)15時53分

写真はナホトカの港の様子。昨年9月撮影(2018年 ロイター/Katya Golubkova)

[パリ/ロンドン/モスクワ 25日 ロイター] - 欧州情報機関の複数の関係筋によると、北朝鮮は昨年8月の国連安全保障理事会の制裁決議で石炭輸出が禁止された後に、ロシアを経由して日本と韓国に石炭を輸出していた。専門家はこの取引が国連の制裁決議に違反している可能性が高いとみている。

国連安保理は昨年8月5日に採択した制裁決議で、北朝鮮からの石炭輸出を禁止した。同国が核・ミサイル開発に必要とする外貨の獲得手段を断つのが狙いだった。

しかし、関係筋によると、北朝鮮は制裁が決まった後に少なくとも3回にわたり、ロシア東部のナホトカ港やホルムスク港に石炭を輸送。港でいったん荷下ろしした後、別の船に積み替えて韓国や日本に運んだという。

ナホトカ港の管理記録によると、北朝鮮の南浦港から来たパラオ船籍の船舶が昨年8月3日に到着し、石炭1万7415トンが陸揚げされた。この船は同月18日に出港した。

8月16日には同じ停泊場所に別の船が到着し、石炭2万0500トンを積み込んだ後、24日に韓国のウルサン港に向かったと記録されている。

サハリン州のホルムスク港の管理記録によると、この港では昨年8月と9月に少なくとも北朝鮮船籍の船舶2隻が同国から到着し、石炭を荷下ろしした。このうち1隻は8月1日─9月12日の間に3回ホルムスク港に寄り、合計1万5542トンの石炭を運んだ。もう1隻は8月3日と9月上旬に2度寄港し、合計1万0068トンの石炭を運んだ。

国連の制裁決議後だったため、これらの石炭はロシアの税関を通過しなかったが、その後に中国系の船舶に積み込まれた。ロイターが入手した港湾管理記録には、これらの船の行き先は北朝鮮と記されていた。しかし、船舶追跡情報を見ると、実際には韓国の浦項港と仁川港に向かっていた。

欧州の関係筋は、中国が北朝鮮からの石炭輸出の取り締まりを強化したため、ロシア経由の密輸ルートが生まれたと指摘する。

これとは別に、ある海運関係者は、北朝鮮から輸出された石炭の一部が昨年10月に日本と韓国に到着したと語った。

米国の安全保障当局筋は、ロシアを介した北朝鮮からの石炭輸出を確認した上で、今も継続中だと明らかにした。

ロシア外務省は、ロイターが今月18日に送ったコメント要請に回答していない。

ロシアの国連代表部は昨年11月、国連安保理の制裁委員会に対し、ロシア政府が国連決議に基づく制裁措置を履行していると報告している。

ロイターは、ロシアの港で荷下ろしされた北朝鮮の石炭が日本と韓国に運ばれたものと同じかどうかを独自に確認できていない。また、ロシアから北朝鮮の石炭を日本と韓国に運んだ船の持ち主が積み荷がどこから来たかを知っていたかどうかも確認できていない。

米財務省は24日、北朝鮮の核・ミサイル開発を支援しているとして、北朝鮮の9団体と北朝鮮籍の船舶6隻、16個人を米独自の制裁対象とすると発表。昨年9月に北朝鮮の石炭をホルムスク港に運んだ船の持ち主も対象に含まれた。

北朝鮮からの石炭輸出でどの企業が利益を得ているかは不明。

米国務省の報道官は北朝鮮からの石炭輸出について問われると、「ロシアがさらなる対策を講じなければならないことは明らかだ」と述べた。

ホワイトハウスはコメントの求めに応じていない。

韓国外務省当局者は、北朝鮮からの石炭輸出について「韓国政府は北朝鮮による制裁逃れを監視している」と述べ、ロイターが報道した石炭輸出を外務省が認識しているかどうかは明言しなかった。

日本の外務省はコメントの求めに応じていない。

*写真を更新しました。

ロイター
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