FOMCに影落とすイラン情勢、慎重なタカ派姿勢打ち出すか
写真は米連邦準備理事会(FRB)の外観。2022年6月、ワシントンで撮影。REUTERS/Sarah Silbiger
Howard Schneider
[ワシントン 16日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は17-18日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。政策金利据え置きが決定されるのはほぼ確実視されている。議論の焦点は、米国・イスラエルとイランの戦闘を巡る不確実性が大きい中で、経済成長や物価にどのような影響が及ぶかになるだろう。
FRBは、コロナ禍の供給ショックによって2%の物価目標を5年連続で達成できない状況に置かれたことを踏まえ、今回のFOMCではあからさまではないにせよ、慎重な形でタカ派的な姿勢を打ち出す公算が大きい。
物価上昇率は目標を約1ポイント上振れる局面を抜け出ないどころか、さらに加速する流れになっている。特に2週間で50%近く高騰した原油価格の高止まりが続けば、その傾向が強まりそうだ。
ドイツ銀行のチーフ米国エコノミスト、マシュー・ルゼッティ氏は「2週間前には考えられなかった問題が、より活発に論じられつつある。それはFRBが年内に利上げする可能性だ」と先週記した。
もっともルゼッティ氏は、インフレ期待が明確に跳ね上がらない限り、現段階で利上げはまだ現実的ではないと結論付けている。
FRBは、醸成されているショックが物価上昇だけでなく、金融環境の引き締まりや資産価格下落、不確実性の増大という形で顕在化し、米経済の「耐える力」を損なわないかどうかにも目を配る必要がある。
TSロンバードのグローバル・マクロ・チーフエコノミスト、ダリオ・パーキンス氏は、トランプ大統領の政策による混乱が生み出した最悪期を米経済がようやく乗り切ったように見えたところで、イランとの戦争という新たな対処を迫られていると指摘。同社の基本シナリオでは、戦争は短期間で終わるとみているが、足元のエネルギー危機は経済が耐えられる限界としては過剰なショックの1つになりかねないとの見方を示した。
経済のほころびにつながるリスク要因としては、2月の非農業雇用者が前月比9万2000人減少したことや、物価高が既に中低所得層の家計を逼迫させていること、資産価格下落が続いた場合の信用供給の引き締まりへの懸念なども挙げられる。
<五里霧中での情勢判断>
前回のFOMC以降これまでに入手可能なデータの中では、基調的な経済見通しに変化をもたらす材料は見当たらない。
しかし最新データであっても、2週間前にイラン攻撃が始まり、ホルムズ海峡が事実上封鎖される事態になった後では、もはや古びた情報に思えてしまう。またトランプ氏はなお戦争終結の時期や達成すべき目標をあいまいなままにしている。
それでもFRBは今回のFOMCで最新の経済物価見通しを公表し、精一杯の推測を通じて、引き締め的な政策によりインフレに断固対峙すべきか、あるいは経済の減速を和らげるために利下げすべきかについて判断をしなければならない。
2022年にロシアがウクライナへ侵攻した際に、パウエル議長はその影響が「極めて不透明だ」と述べるとともに、世界的な原油およびコモディティー価格の上昇による直接的な影響に加えて、海外の経済活動抑制やサプライチェーンがさらなる混乱を起こす可能性があり、それらが貿易などの経路を通じて米経済に波及すると指摘した。また金融市場のボラティリティーが特に持続した場合に、金融環境を引き締め、実体経済に影響が波及しかねないとも説明していた。
<もっと流動的な状況>
現在の状況はもっと流動的と言える。米国が戦争当事者となり、世界の石油生産やその他製品の大半の移動が滞っているからだ。
提起されている幾つかの問題は重大で、計り知れないほど幅広い。例えば米国債利回り上昇が、国際金融資本市場における米国が持つ特権の喪失を意味しているのか、それともインフレ期待の高まりか、あるいは別の要因が効いているのかという事柄がある。専門家の想定する「基本シナリオ」では戦争が短期に終わり、最終的には原油価格が下落する見通しになっている。ただより深刻なシナリオに従えば、米国とイランの対立は長期化する。
こうした中でFRBとしては、現在の不確実性を考慮して見通しを示す上で最も容易な方法は、今年の利下げ回数に関するFOMCメンバーの予想中央値を1回とした昨年12月の内容を踏襲することかもしれない。
ただ各メンバーの予想のばらつき自体が何事かを物語っている。12月公表の見通しでは、19人のうち6人は政策金利を高い水準に据え置くべきとの考えを示していた。そうしたタカ派姿勢は今年1月に一段と強まり、1月27-28日開催のFOMCの議事要旨では、数人のメンバーが年内の利上げ可能性を排除しない構えであることが判明した。
それ以降もインフレ懸念は高まる一方だが、経済成長の先行きやさまざまな亀裂を巡る不安も強まるかもしれない。これは予測を立て、対外的なメッセージを策定しようとする中央銀行にとって、まさに「最悪の板挟み」だ。
ソシエテ・ジェネラルの調査責任者を務めるスバドラ・ラジャッパ氏は「戦争は速やかに解決され、持続的な経済への悪影響はないというのが、われわれの基本シナリオの想定だ。しかしインフレの高まりと労働場市場悪化により、FRBが(物価安定と雇用最大化という)2つの使命を両立させることは難しくなっている」と分析した。





