アングル:高級ブランド株の急変動、AI懸念とヘッジファンド取引が増幅
写真はLVMHのロゴ。パリ近郊で開かれたカンファレンス会場で2025年6月撮影。REUTERS/Benoit Tessier
Helen Reid Nell Mackenzie
[パリ/ロンドン 17日 ロイター] - 仏LVMHや「グッチ」のケリングといった高級ブランド会社が2年間の低迷からの回復に苦戦する中、AI(人工知能)による市場変動を巡る投資家の懸念やヘッジファンドの取引が急激な株価変動を引き起こしている。
新型コロナウイルス流行後のブームを経て、多くのトップブランドで高級ハンドバッグなどの販売が減少。投資家は現在、このセクターが成長軌道に戻る兆候に敏感になっている。
時価総額2600億ユーロ(3084億9000万ドル)で世界最大の高級ブランドグループLVMHの株価は先月下旬、1日としては2020年以来の大幅安となった。ベルナール・アルノー最高経営責任者(CEO)が今後の見通しについて慎重な姿勢を示し、急回復期待が打ち砕かれたためだ。 昨年10月のLVMHによる市場報告を受けて株価は12%上昇し、1日の上げ幅としては20年以上ぶりの大きさを記録していた。
<ヘッジファンドが空売り>
ヘッジファンド・データ・プロバイダーのHazeltreeによると、今回の決算シーズンを前に、高級ブランド株と幅広い消費財セクターは最も空売りされた銘柄群の一つだった。
ケリング株は先週11%急伸。第4・四半期売上高が予想より小幅な減少にとどまったことなどを受けた。
ヘッジファンド投資家で東京理科大学基金の特別顧問を務めるマイケル・オリバー・ワインバーグ氏は「ケリングのような高級ブランド株のボラティリティーを押し上げている要因は2つある」と指摘する。
「第1に、インデックス運用により資本が受動的な『バイ・アンド・ホールド』ポジションに固定されている」と説明。「第2に、調査や情報面で優位性がある場合にニュースやデータポイントに特化して取引を行うマルチマネジャー型ヘッジファンドが現在、市場を支配している」と話す。
<AIバブルリスク>
富裕層の消費に依存するラグジュアリー業界は、米国株式市場の影響を他業界以上に受けやすい。米国株はAIトレンドによって乱高下している。
ケリングのルカ・デメオCEOは10日、決算発表後に記者団に「多くの米国人は株式を保有しているため、市場が堅調に推移すれば消費が成長をけん引し続ける。クラッシュやAIバブルなどが発生すれば改めて議論することになる」と指摘。「しかし現時点では良好な状況だ」と述べた。
長期投資家は耐え忍ぶしかない。
LVMH株を保有する英J・スターン&Coのマネジングパートナー、クリストファー・ロスバック氏は「高値圏で集中した市場環境下では、明らかに投資家は神経質になり、誰もが売りボタンを押したくなる」と語る。
「企業のファンダメンタルズ(基礎的条件)を見極め、ノイズを無視する必要がある。高級ブランド企業を直撃した大きな循環的課題はあるが、各社はそれらを克服しつつある」と付け加えた。
一部投資家は業績回復ストーリーに乗じて投資対象の転換を図っている。苦戦中のケリングは減収幅が予想よりも小幅にとどまったことで急伸した。一方、バッグの「バーキン」で知られ、減速期を無傷で乗り切った仏エルメスは再び堅調な四半期業績を発表した後も株価はわずか2.5%高にとどまった。エルメスの予想株価収益率(PER)は45倍で、LVMHの2倍以上に達する。
ロスチャイルド&Coレッドバーンのラグジュアリー調査担当責任者エミリー・クーリッジ氏は「(各社の)ニュアンスが微妙に異なるため、株価の動きがかなり顕著になっている。それはわれわれが脆弱な転換点にいるからだ」と述べた。





