アングル:対ドル以外で進む円安、人民元高やグリーンランドも影響 歴史的安値圏に
写真は円紙幣。2024年7月代表撮影。REUTERS
Shinji Kitamura
[東京 21日 ロイター] - 外国為替市場で再び円安が加速してきた。円相場は介入警戒感の強い対ドルでこそ安値圏で底ばいだが、ユーロやスイスフランなどそれ以外の通貨に対して次々に歴史的安値が目前に迫り、名目実効レートは最安値を割り込んだ。日本の解散総選挙で財政拡張見通しが強まっていることに加え、中国人民元高や、グリーンランド問題による「米国売りトレード」なども、結果的に円安を支えている。
<円インデックス最安値、対中貿易赤字拡大も影響>
介入警戒でドル/円の上昇が158円付近で足止めとなる中、対米ドル以外の通貨に対するクロス円相場の下げが目立ってきた。21日までにスイスフラン/円は初の200円台へ上昇、ユーロ/円も185円半ばと1999年のユーロ発足来となる高値が目前。英ポンド/円も前週に付けた17年半ぶり高値圏で高止まりを続けている。主要通貨以外でも、メキシコ/円が1年半ぶり高値を付け、中国のオフショア人民元に対しても市場開設来の最安値を記録した。
中国は日本にとって最大の貿易相手国で、総合的な為替レートの変動を示す実効レートに与える影響も大きい。日銀が2国間の為替レートを貿易額などで計った重要度に基づき集計、日々算出する円インデックス(名目実効為替レート)は、すでに2024年夏の水準を大きく下回り、算出開始以来最低を更新し続けている。
現在の円安が高市早苗政権の拡張的財政政策に起因することは、市場で衆目の一致するところだが、実効レートについては、対人民元での円安も見逃せない。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは、対中貿易が慢性的な赤字で、最近の赤字幅も年6兆円超と過去最大級に膨らんでいると指摘し、「日々発生する実需取引は、米ドルを介在するケースも多々あるが、基本的には円余剰・元不足がほぼ定着している。人民元/円の下落局面で下値を支える(円高を抑制する)縁の下の力持ちのような役割を果たしている」と説明する。
<グリーンランドも円安材料>
トランプ米大統領がデンマーク自治領のグリーンランドの領有に意欲を示していることも、市場では円安材料と見なされている。
これまで、国家間の対立など地政学的リスクの発生時には、リスク回避的に円が買われるケースもあったが、今回は米国市場がトリプル安に見舞われ、対米ドルでユーロやスイスフランなどが買われている。
ドル以外の主要通貨の上昇圧力と、ドル安、高市政権の財政拡張見通しによる円安圧力とが同時に発生していることで、結果的にドル安/円安となって、ドル/円の動きが乏しくなる一方、クロス円が上昇し、対ドル以外での円安が進みやすい土壌が出来上がっている。
多くの参加者にとって、この流れは好都合だ。相対的に金利水準が低い円を売り、高い金利の通貨を買い持ちにすれば、事実上のキャリートレードとなり、値幅取りだけでなく、金利差収入も狙える妙手となるためだ。
トレーダーとして日々、様々な通貨を売買する三菱UFJ信託銀行資金為替部上級調査役の岡田佑介氏によると「主要通貨のトレンドは読みづらいが、通貨取引による収益機会獲得という観点では、金利収入も得られる円売りが最も安定している。消去法的に選好されやすい」面もあるという。
リスク回避の円買いが発生しづらくなっていることも、円売りを誘っている。商品先物取引委員会(CFTC)のIMM通貨先物非商業部門の取り組み状況によると、最新の今月13日時点で、投機筋の円の持ち高はマイナス4万枚超と小幅な円売り超にとどまった。円売りポジションが大きく膨らんでいれば、有事に買い戻しが入りやすくなるが、現時点でポジションの傾きに起因する不意な変動は発生しにくい状況だ。
<総選挙、結果問わず帰結は円安との声>
円相場では来月8日投開票の衆院選が、大きな注目を集めている。高市首相が率いる自民党が議席を伸ばせば、財政拡張政策への期待が一段と高まって円安が進むとの見方が大勢だが、介入警戒感の強い対ドルでの下げは限られ、それ以外の通貨に対してさらに売られる公算が高いと予想する声が多数聞かれる。
仮に与党が議席数を減らしたり、与党の座を明け渡すような結果となった場合はどうか。多くの参加者にとって予想外の展開となり、高市政権発足後の円安が修正される形で、いったん円が急速に買い戻されるとの見方が多い。
だが、たとえ政権交代が起こったとしても「次の政権が積極的に利上げを推し進めたり、緊縮財政へ転じたりすることは考えづらい。長期的な円安トレンドは変わらない」(ふくおかフィナンシャルグループ・チーフストラテジストの佐々木融氏)として、最終的には円安基調へ回帰するとの指摘が出ている。
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