金利正常化は「適切なペース」で、時期は経済・物価見ながら判断=小枝日銀委員
11月20日 日銀の小枝淳子審議委員は20日、新潟県で開いた金融経済懇談会後に記者会見し、金利の正常化を進めるタイミングは「足元の経済・物価状況について確認しながら判断していく」と述べるにとどめ、具体的な利上げの再開時期に言及しなかった。写真は2024年3月、都内で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Takahiko Wada
[新潟市 20日 ロイター] - 日銀の小枝淳子審議委員は20日、新潟県で開いた金融経済懇談会後に記者会見し、金利の正常化は「適切なペースで進めていくことが必要だ」と述べた。ただ、具体的なタイミングは「足元の経済・物価状況について確認しながら判断していく」とするにとどめ、利上げの再開時期を明言しなかった。海外経済の不確実性が続く中で、国内企業の賃金設定行動など物価を取り巻く状況を見ながら判断していくと説明した。
小枝委員は午前のあいさつで、実質金利が「他国と比べても明らかに低い」とし、実質金利を均衡状態に戻していく金利の正常化を進めることが「将来に意図せざるゆがみをもたらさないためにも必要だ」と述べていた。
午後の会見では、基調的な物価上昇率が「総じてみれば2%ぐらいになっている」と改めて述べた上で、その定着度合いを見ていく必要があると強調した。定着の見極めに当たっては、経済の底堅さや需給ギャップなどを総合的に見ていく必要があると述べた。
また「10月の展望リポートで示した中心的見通しと大きく見解が変わっているわけではない」として、金融政策がビハインド・ザ・カーブに陥るリスクに否定的な見方を示した。
日銀が0.75%への利上げに踏み切った場合、その先の利上げパスを描く上で中立金利との距離感をどう考えるかが重要な論点になる。小枝委員は、中立金利を導く際に用いる自然利子率について、日銀が2024年に取りまとめた多角的レビューで示したマイナス1.0―プラス0.5%との推計が「足元でも大きく変更はないとみている」と述べた。自然利子率の推計値に物価2%を足せば、中立金利の下限は1%になる。
<市場動揺>
高市政権の拡張財政への警戒感から、外為市場では円安が進み、長期金利は1.8%台に急上昇している。小枝委員は、為替と金利それぞれについて、水準や値動きへの具体的なコメントは差し控えるとした。
その上で、為替については「経済や金融のファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが重要だ」とし、為替の変動が物価に与える影響を「丁寧に見ていきたい」と述べた。
長期金利については、市場で形成されることが基本だとした上で、急激に上昇するといった「例外的な状況」があれば、安定的な金利形成を促す観点から機動的に国債買い入れの増額などを実施するとの考えは従来から変わっていないと説明した。





