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マクロスコープ:ソフトバンクG株「持たざるリスク」は本物か(上) 投資判断上げ相次ぐ

2025年10月23日(木)08時45分

 10月23日、ソフトバンクグループ(SBG)株への注目が高まっている。写真は同社のロゴ。2021年2月、都内で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Yusuke Ogawa

[東京 23日 ロイター] - ソフトバンクグループ(SBG)株への注目が高まっている。年初からの株価上昇率は約2.5倍に達し、日経平均(同23%上昇)を大きく上回る。出資先の米オープンAIの評価額の拡大などを背景に、株式時価総額ではトヨタ自動車に次ぐ2位に浮上。短期的な過熱感を警戒する向きもあるが、大手証券会社がSBG株の目標株価を相次いで引き上げており、市場関係者の間では「持たざるリスク」を指摘する声が出ている。

孫さんの夢実現にまた一歩進む―。今月8日、SBGが53億ドルを投じてスイスの重電大手ABBのロボット事業を買収すると発表すると、UBS証券はすぐにこんな見出しのレポートを配信した。文中では「AIロボット事業の魅力は、費用が重い“人”を置き換える可能性にある。仮に実現できた場合は、売上高拡大が想定しやすい」と好意的に評価し、投資判断は3段階中で最上位の「買い」を継続した。

UBSは先月下旬に、目標株価を1万7400円から2万3500円(注:22日終値は2万3700円)に変更したばかり。安井健二アナリストは「従来の投資ポートフォリオは余りにも多種多様で分かりづらかったが、米国のAIインフラに投資するスターゲート計画とオープンAI、英半導体設計のアーム・ホールディングスという優良資産が全体をけん引する構図が明確になった」との見方を示す。

投資会社化するSBGが、業績指標として重要視する「時価純資産(NAV)」(=保有株式価値-純有利子負債)は、6月末時点で約32兆円。孫正義会長兼社長は今年の株主総会で「孫正義ディスカウントなのかもしれないが、我々の時価総額は保有する財産価値の半分以下だ」と嘆いたが、8月頃から株価は上昇トレンドに入り、足元の時価総額はすでにNAVと同程度の水準に近づいている。

SBG株を巡っては、野村証券が9月に目標株価を引き上げたほか、今月に入って東海東京インテリジェンス・ラボが従来比約2倍の2万5730円に設定した。みずほ証券も7日に、傘下のアームの株価上昇をふまえて1万3400円から2万8000円に変更している。

みずほ証は、対話型AI「チャットGPT」の利用者急増も考慮すると、SBGの株価評価はこれまで常態化していた「NAVディスカウント」から、「NAVプレミアム」への転換が視野に入ると説明。「これを荒唐無稽な楽観論と一蹴すること自体が危険で、持たざるリスクも意識すべき」との見解を記した。

実際、SBG株の組入比率が投資信託の運用成績を左右している。主要な日本株アクティブ投信のうち、過去1年の基準価額上昇率(10日時点)をみると、ファンド構成銘柄でSBGを最も多く組み入れた「ノムラ・ジャパン・オープン」がトップに立つ。同投信は30%を超える好成績を上げる一方、SBG株を上位に含まない競合は見劣りする結果となっているのが実状だ。

現在の株式市場は企業収益に基づく「業績相場」というよりは、金融緩和と積極財政を見込んだ「高市トレード」や、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待に支えられた「金融相場」の色彩が強い。値がさ株のSBG株は指数先物と連動して買われやすいことも株価高騰につながっており、ファンド運用者にとってはSBG株の買い増しを検討せざるを得ない状況だという。

(小川悠介 編集:橋本浩)

●ソフトバンクグループの保有株式(25年6月末時点)

アーム       :19.8兆円

ビジョンファンド  : 9.6兆円

LatAmファンド : 0.9兆円

ソフトバンク    : 3.4兆円

Tモバイル     : 2.2兆円

ドイツテレコム   : 0.3兆円

アリババ      :0.01兆円

その他       : 2.5兆円

合  計   : 約39兆円

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