中小上場企業、仮想通貨イーサの投資急増 利回りなど魅力

中小規模の上場企業の間で、インフレヘッジのための暗号資産(仮想通貨)投資でビットコインよりもイーサリアム(イーサ)を選ぶ動きが出ている。写真は2021年11月撮影(2025年 ロイター/Dado Ruvic)
Niket Nishant Manya Saini
[5日 ロイター] - 中小規模の上場企業の間で、インフレヘッジのための暗号資産(仮想通貨)投資でビットコインよりもイーサリアム(イーサ)を選ぶ動きが出ている。入手しやすさ、信頼性、強力なブロックチェーン(BC)が土台にあることなど、さまざまな利点を兼ね備えているとの見方からだ。
ロイターが規制当局への申請・開示書類を分析したところ、7月末現在で企業がバランスシート上に保有しているイーサは96万6304枚、総額35億ドルほどに達していた。昨年末は11万6000枚にとどまっていた。
暗号資産インフラの米ビットマインとゲームメディアの米ゲームスクエアは今年、イーサへの投資積み増し計画を公表してから株価が3679%と123%、それぞれ跳ね上がった。
価格の上昇でしか利益が得られないビットコインと異なり、イーサは「ステーキング」にも使えるため、より魅力的なリターンを求める企業に選ばれている。ステーキングとは、イーサをブロックチェーン・ネットワークに預ける代償として報酬を得る仕組みで、利回りは3―4%程度だ。
ビット・デジタルのサム・タバー最高経営責任者(CEO)は「イーサは成長の潜在力と、優良資産としての正統性のバランスが良い。機関投資家レベルの投資対象として十分な規模を備えていながら、今なら投資時期がまだ十分早いので将来の上昇によって恩恵を被ることができる」と語った。
イーサのブロックチェーンは融資プラットフォームや取引プロトコル、ステーブルコインなどに幅広く応用されているため、イーサは仮想通貨金融システムの中核を成している。ベンチャーキャピタル、イノベーテイング・キャピタルのジェネラルパートナーであるアンソニー・ジョーギアデス氏は「ビットコインが金(ゴールド)に似て一面的な性格が強いのに対し、イーサの所有は石油の所有により近い。イーサは単なる価値貯蓄手段ではなく、分散型金融の土台だ」と語った。
ただ、イーサには規制を巡る不透明感や価格変動などのデメリットもあり、企業による投資を阻み続ける要因となっている。シンガポールの企業財務助言企業、ストレーツバーグのマネジングディレクター、アヌジ・カーニク氏は「大半の最高財務責任者(CFO)は流動性の高い現金をイーサに換えないだろう。イーサは依然として、相場変動と複雑性に耐えられる『テックに前向きな』財務部に最も合うニッチなツールだ」と話した。