マクロスコープ:自動車関税引き下げに不安の声、政府内「いつ動くかわからない」

日米関税交渉で合意した自動車関税引き下げの実施時期が読めない。写真は販売店に展示されたマツダ車。7月15日、広島市で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto
[東京 4日 ロイター] - 日米関税交渉で合意した自動車関税引き下げの実施時期が読めない。トランプ米大統領は1日、多くの国に新たな関税を課すための大統領令に署名。日本の税率は合意通り15%で確定したものの、分野別関税である自動車は含まれていなかった。週末を挟んだ4日、日本政府内からは「いつ米国が動くかわからない」などと先行きを不安視する声も聞かれた。
石破茂首相は4日に開かれた衆院予算委員会で、「(日米が)ウインウインの関係」になるものだと改めて合意の意義を強調した。「合意をこれから実行に移す。合意するよりも実行に移す方が難しい」とも語った。
実際、先行きは不透明だ。内閣官房の幹部は「米国はやはり自動車については相当硬い。米国内の自動車メーカーからも相当な突き上げがあるようだ」と明かす。その上で「働きかけは続けているが、いつ米国が動くかわからない」ともこぼした。経済官庁幹部は、米国がメキシコなどとの交渉を続けている点を挙げ「(それらが)落ち着かないと、他国との作業は動かないでしょう」とし、実際の引き下げまでは時間を要する可能性もあると述べた。
予算委の答弁で、赤沢亮正経済再生相は「相場観はなかなかない。米国から見て貿易黒字国の英国も1カ月以上かかった。一刻も早く実現するように全力で働きかけていく」と説明。石破首相は「最後は(トランプ)大統領との間で決めなければいけない場面があると思う。躊躇なくやっていく」とし、「どうすれば国益が最大限に実現されるか。最善の決断をしていく」とも述べた。
とはいえ、いまも日々自動車業界は高関税の影響を受け続けている。マツダのサプライヤーとして、ドアの内装パネルを製造する南条装備工業(広島市)の山口雄司社長はロイターの取材に「(トランプ大統領がいつ発言を変えるのか)不安だ。合意文書の締結は早急にやっていただきたい。先がまだ完全に見通せていない」と語る。
【上智大学教授の前嶋和弘氏(米国政治)】
日米の関税合意後、自動車関税の引き下げがいつ始まるのか見通せない。理由を考える際には、現在の米国の国内事情に留意する必要がある。まずグリア米通商代表部(USTR)代表、ラトニック商務長官、ベセント財務長官が共同歩調をとっていない状況はいまだに続いている。交渉の実務を担う官僚もまだ揃っていない。米国内の様々な体制整備が遅れている。加えて、他国との交渉がある中で、日本への対応は余計遅くなっている印象だ。ひとえに米国側の問題が大きい。
今回の交渉は「通常の交渉」ではない点も指摘したい。通常の関税交渉であれば文書をしっかりと交わすものだが、今回はそうではない。赤沢経済再生相とトランプ大統領の最後のやり取りを見ても、トランプ氏をどう喜ばせるか、という点に注力したのだろう。結果的に、合意は「ごまかし」に満ちたものになった。それは悪いことばかりではなく、ごまかしがある分トランプ氏を喜ばせることができたとも言える。
トランプ氏にとってのゴールは、「米国が日本から色々なものを勝ち取ったんだ」と発表することだった。その目的はすでに達成されている。日本政府はこうしたことをよく自覚し、石破首相が直接アプローチするなり、赤沢氏が再び訪米するなりして、交渉の早期実現を働きかけるべきだろう。交渉で先行した英国も合意内容の発効に1カ月以上を要している。その事例を考えても、日米の間で早晩、何らかの形で進んでいくと考えている。
一方、中長期的に見ると課題は少なくない。日本企業の米国進出が拡大すれば、それは国内産業の空洞化につながりかねない。産業の大きな転換点になる可能性がある。また、米国はこれまで自由貿易の旗振り役だった。自由貿易で世界を豊かにし、貧しい国々を助けてもきた。これからは、そういう世界観ではなくなる。米国は高関税の、保護主義を主導する国になってしまった。
こうした状況を考えれば、日本や欧州を含めた国々が、「米国抜き」の自由貿易ネットワークを構築する必要が出てくるだろう。すでに欧州の一部の研究者は、貿易ネットワークを5年で米国抜きのものに組み替えられると言っている。日本は安全保障の問題があって難しいが、長い目でみれば対米貿易のスタンスも見直さなければならないのではないか。
(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)
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