ロシア経済、制裁発動でもルーブル安と原油高が短期的支えに=アナリスト

7月30日、 ロシア金融市場がトランプ米大統領の新たな制裁発動の脅しに慎重に反応する中で、アナリストらは制裁が発動されてもルーブル安と原油高が短期的にロシア経済を支える可能性があると述べた。写真はルーブル紙幣。モスクワの銀行で2023年10月撮影(2025年 ロイター/Maxim Shemetov)
Elena Fabrichnaya
[モスクワ 30日 ロイター] - ロシア金融市場がトランプ米大統領の新たな制裁発動の脅しに慎重に反応する中で、アナリストらは30日、制裁が発動されてもルーブル安と原油高が短期的にロシア経済を支える可能性があると述べた。
トランプ氏は29日、ウクライナと停戦交渉に応じなければ「10日後に」ロシアに対して関税やその他の措置を開始すると述べ、原油価格が3%以上上昇した。
外国為替市場のルーブル相場は24日から4.3%下落し、30日時点で1ドル=81.9ルーブルとなった。ロシアの株式市場も同じ期間中に3.4%下落した。
ルーブル安はロシア産品の国際的な価格競争力を高め、ドル建ての原油輸出による収益を増加させる。
アロル証券のアレクセイ・アントノフ氏は「米国の新たな制裁に関する不確実性がロシアの投資家心理に引き続き重くのしかかるだろう」と述べた。
ルーブルは今年、ロシア銀行(中央銀行)の金融引き締め政策と、2月にサウジアラビアで開かれた米ロ対話による緊張緩和を巡る期待から、ドルに対して最大45%上昇していた。
ルーブル高は石油・天然ガス大手から金属・肥料輸出企業までロシアの資源企業の収益を圧迫している。こうした企業はロシア株式市場の上場企業の約60%を占めており、外国人投資家は西側の制裁のためにアクセスできない。
一部の輸出企業の株価はルーブルが下落し始めると上昇した。ロシア最大の石油企業ロスネフチは週初めから2%以上上昇し、ニッケル生産大手ノリリスクニッケルは29日に5%を超えて上昇した。
BCS証券のアナリスト、ミハイル・ゼルツァー氏は「ロシアの輸出企業の株価を支える基礎的な要因は、急騰する原油価格と大幅なルーブル安だ」と述べた。
ロシア中銀が25日にインフレ緩和を理由に政策金利を引き下げたのもルーブル安を後押しした。
ルーブル安はトランプ氏の制裁の主な標的であるロシアの国家予算を支えるだろう。歳入が制裁で減少しても、エネルギー収入のルーブル建て価値が増加するためだ。
2025年上半期のロシア国家予算に占めるエネルギー収入の割合は27%で、23年と24年の約30%から低下している。
金融市場はルーブルが1ドル=90ルーブル程度まで下落してもある程度歓迎するが、100ルーブル以上に急落すれば経済に悪影響を及ぼすとみている。