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インタビュー:年末に向け130円台後半まで円高進む可能性=古沢元財務官

2025年06月06日(金)16時56分

 元財務官の古沢満宏氏(三井住友銀行国際金融研究所理事長)は6日、ロイターのインタビューに応じ、トランプ米政権が人為的にドル安誘導を進める可能性は低いとしつつ、年末に向けてドル/円相場が徐々に130円台後半─140円近辺まで円高方向に進む可能性を指摘した。写真は、ドルと円紙幣。東京で撮影(2025年 ロイター/Yuriko Nakao)

Yoshifumi Takemoto Leika Kihara

[東京 6日 ロイター] - 元財務官の古沢満宏氏(三井住友銀行国際金融研究所理事長)は6日、ロイターのインタビューに応じ、トランプ米政権が人為的にドル安誘導を進める可能性は低いとしつつ、年末に向けてドル/円相場が徐々に130円台後半─140円近辺まで円高方向に進む可能性を指摘した。日米関税協議での合意などにより経済の不確実性が低下すれば、日銀は年内に1度追加利上げが可能との見方も示した。

<トランプ政権のドル安誘導「難しい」>

古沢元財務官は為替に関し、米国は今の為替水準がファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映しているとしているため「これ以上のドル高は期待してないだろう」と指摘。日本もさらなる円安はインフレが進むという理由で望んでいないため、不確実性が徐々に解消するのに伴い緩やかに円高が進むと予想。「かつてのような110円とか120円といった水準にはならないだろう。年末に向けて130円台後半─140円くらいまで円高が進むのではないか」と話した。

「基本的には米国の金融政策は利下げ、日本は金利を引き上げていく方向。そういう意味では、円高に進むだろう」との見方を示した。

トランプ政権発足以降、為替市場で根強いドル安誘導の思惑については「人為的にドル安にしようとしても簡単にできるものではない」として否定的な見解を示した。米政権はむしろ関税を貿易不均衡是正のツールに使うことを明確にしているとし、各国の協調によるドル高修正も「現実的ではない」と語った。マーケットが巨大化するなど1985年のプラザ合意時とはだいぶ状況が違うと指摘した。

加藤勝信財務相の発言などを受けて、日米関税協議で日本が保有する米国債を交渉カードに使う可能性が一時取り沙汰された。古沢氏は「交渉するときにあらゆるカードが選択肢にあるというのは交渉者として当然のスタンスだが『関税下げないなら米国債売るぞ』といってトランプ氏を納得させられるかと言えば、逆ではないか」と疑問を呈した。

<関税交渉妥結で不確実性低下なら年内追加利上げの可能性>

日米関税協議については、今月の主要7カ国首脳会談(G7サミット)までに大枠合意がまとまれば日本経済の不確実性は徐々に薄れていくと予想。コメ価格など物価が今後落ち着き、実質賃金もプラスになるなど良い方向に向かえば、「年後半に再度日銀が利上げする可能性はある」と予想した。

ロイター
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