ニュース速報
ビジネス

インフレ予想押し上げには成功、2%にアンカーする必要=日銀総裁

2024年05月27日(月)11時06分

日銀の植田和男総裁は27日、金融研究所主催の「2024年国際コンファランス」であいさつし、これまでのところインフレ予想をゼロ%から押し上げることには成功したように思うが、「2%の目標値にアンカーしなければならない」と指摘した。写真は報道各社のインタビューに答える植田総裁。2023年5月、東京で撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Takahiko Wada

[東京 27日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は27日、金融研究所主催の「2024年国際コンファランス」であいさつし、これまでのところインフレ予想をゼロ%から押し上げることには成功したように思うが、「2%の目標値にアンカーしなければならない」と指摘した。インフレ目標の枠組みを有する他の中央銀行と同様、その実現に向けて注意深く進んでいくと述べた。

植田総裁は、審議委員として議論に関わった2000年8月のゼロ金利政策の解除に触れ、仮に明確なインフレ目標値が導入されていれば、ゼロ金利政策解除に至るまでの議論の様相は「実際とは異なったものになったかもしれない」と指摘。

当時の短期金利に関するフォワード・ガイダンス(先行き指針)では「デフレ懸念が払拭されるまでゼロ金利を継続する」としていたにもかかわらず、解除時点のコアインフレ率はマイナス0.5%に過ぎなかったとした。「このゼロ金利政策解除の経験は、その後に行われたフォワード・ガイダンスの有効性を弱めた可能性もある」とも述べた。

日銀は2000年8月の金融政策決定会合でゼロ金利政策の解除を決めた。植田氏はインフレ動向から判断して「待つこと」のコストは大きくないなどとして、ゼロ金利解除に反対した。

国際コンファランスは毎年、学者や海外の中央銀行当局者などが参加して開催され、今年は27日から28日までの予定。今回は、金融政策の多角的レビューの一環で「物価変動と金融政策の課題―教訓と展望―」をテーマに開催される。

植田総裁は、消費税率引き上げなどの影響を除いた消費者物価指数の前年比の後方3年移動平均の推移を示し、インフレ率は1996年から2022年まで27年間にわたってマイナス1.0%からプラス0.7%の範囲にとどまり続けたとした。

植田総裁はその主たる理由は「ゼロ金利制約」にあると指摘。オーバーナイト物コールレートは95年後半までには0.5%を下回る水準まで低下しており「ゼロ・インフレの罠が始まるまでには、日本銀行はすでに経済を刺激するための短期金利に対する影響力を使い切ってしまっていた」と述べた。

日銀がこの間、採用してきた政策枠組みの展開について「いくつかの点でその時点で最適ではなかったと指摘する方もいるかもしれない」とした。

資産買い入れを開始したタイミングについて、インフレ動向を踏まえれば日銀の積極的な長期国債の買い入れの開始は「比較的遅いものだった」と述べた。日銀は01年3月の量的緩和開始でぞれまでより多くの長期国債を購入し始めたが、保有残高が顕著に増加するのは13年4月に始まった量的・質的金融緩和以降だ。

ただ、日本の10年金利は90年代後半にはすでに2%を下回っていたため「もし2000年代初頭に日銀の国債買い入れの増額が行われたとしても、果たして十分な効果があったのか、との疑念を生じさせる」と指摘した。

植田総裁は日銀が困難な政策運営に直面したもう1つの要因として、低インフレ予想の定着にも言及した。

日銀が直面する課題の1つとして、植田総裁は自然利子率の正確な把握を挙げ「過去30年間の長きにわたって短期金利がほぼゼロにはり付いてきた日本では、特に難しい」と述べた。その上で、金利変動が乏しいもとでは、金利変動に対する経済の反応度合いを計測することは相応の難しさがあるとした。

植田総裁のあいさつは英語で行われた。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

レバノンが食料安全保障の危機に直面、イラン戦争で=

ワールド

米EU 、 重要鉱物確保で合意間近と報道 中国支配

ワールド

台湾3月輸出額、初の800億ドル突破 AI関連需要

ビジネス

ダイムラー・トラック、第1四半期販売9%減 北米が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡散──深まる謎
  • 4
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 7
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 8
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 9
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中