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FRB「市場との対話」、専門家は高評価 国民の信頼は低水準

2024年05月10日(金)14時40分

米連邦準備理事会(FRB)による市場との対話は比較的高く評価されていることが、学者と民間アナリストを対象に実施した調査で明らかになった。パウエル議長、1日撮影。(2024年 ロイター/Kevin Lamarque/File Photo)

Howard Schneider

[ワシントン 9日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)による市場との対話は比較的高く評価されていることが、学者と民間アナリストを対象に実施した調査で明らかになった。

調査はブルッキングス研究所ハッチンス財政・金融政策センターが、学者31人と民間アナリスト24人を対象に実施。パウエル議長率いるFRBの市場との対話に対する総合評価は中央値で「B+」だった。

新型コロナウイルス流行でFRBが一連の複雑な対策を打ち出した2020年の調査では「A-」の評価を得ており、評価がやや下がった。

ただ、連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル議長の記者会見については、回答者の80%以上が「極めて役に立つ、もしくは役に立つ」と答え、政策当局者のインフレ、雇用、経済成長に対する見解をまとめた四半期経済見通しやFOMC声明についても、回答者の70%以上が同様の見解を示した。

もっとも、政策当局者の政策金利見通しを示す「ドットプロット」については「極めて役に立つ、もしくは役に立つ」との回答が約半数にとどまった。ドットプロットを巡っては、見通しが明確になるのではなく逆に混乱を招くのではないかとの指摘が出ている。

FRB理事と地区連銀総裁の講演やメディア報道については、60%以上が「やや役に立つ、もしくは全く役に立たない」と答えた。

今回の調査が実施されたのは3月22日─4月5日。その後、市場では利下げが近いとの観測が後退し、高金利が続くとの見方が広がった。

一方、今週発表された世論調査機関ギャラップの調査では、パウエル議長に対する国民の信頼は引き続き低く、「経済のために正しいことをする、あるいは推奨する」と「大いに信頼している、もしくはかなり信頼している」との回答は39%にすぎなかった。

昨年は36%と、歴代FRB議長で最低を記録。新型コロナへの対応を進めていた20年には60%近くまで上昇していた。

<パウエル氏の言葉の重み>

FRBが公式な文書を公表する以外に、当局者はインタビューや公開スピーチを数多くこなしている。

調査によると、回答者の60%近くが、地区連銀総裁の発言を減らすべきだと考えているのに対して、88%がパウエル議長は連銀総裁と同程度かそれ以上話すべきと回答した。パウエル氏はコンセンサスを重視しているが、その発言が重みを持っていることが浮き彫りになった。

FRBの市場との対話以外では、回答者の3分の2が現在のインフレ目標2%の引き上げに反対した。インフレ目標の引き上げは、FRB当局者も少なくとも現時点では否定的な考えを示している。

現在の金融政策へのアプローチに関しては、最大雇用の重視維持が支持されていることが分かった。FRBは20年に政策アプローチを改正しており、近いうちに再び見直す予定となっている。

低インフレ時期にインフレ率が「一時的に」目標を上回ることを容認し、長期の平均でみた目標達成を目指す政策については、支持は少なかった。この政策は、10年にわたって物価上昇が緩やかだった時期に採用された際には妥当とみられたが、インフレ率が高止まりしている今では関心が薄れているようだ。

調査では、回答者の約60%が、FRBはその運営枠組みの一部を「大幅に見直す」か、少なくとも「微調整」すべきだと答えた。

ロイター
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