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アングル:ユーロ圏国債市場、激動の今年は「勝ち組」 来年も堅調見通し

2023年12月24日(日)09時06分

Yoruk Bahceli

[19日 ロイター] - 激動の年となった今年のユーロ圏国債市場のリターンは6.5%と、米英を上回る「勝ち組」となっている。消費者の財布のひもが固くなって経済が悪化していることから、その魅力は2024年も続きそうだ。

インフレ高進で2年間マイナスだったグローバル債券リターンの回復をけん引。ICE・BofAの指数によれば、今年の米国債のリターンは3.5%、英国債は2.4%だ。

記録的なペースによる利上げの影響が懸念されるイタリア債は9%近いリターンとなった。

一部の投資家にとってはこれは始まりに過ぎない。

アリアンツ・グローバル・インベスターズのシニアポートフォリオマネジャー、マイク・リデル氏はこうした傾向が続くと見ており、米国とカナダから欧州に資金をシフトしている。

ユーロ圏のインフレは急速に軟化しており、年末の景気後退が迫っている。ロイター調査では、ユーロ圏の来年の成長率はわずか0.6%で、米国の半分にとどまると予測されており、安全資産であるドイツ債が買われそうだ。

憲法裁判所がドイツの予算に600億ユーロの打撃を与えたことで、来年の成長率は最大0.5%押し下げられる可能性がある。

<財政引き締め>

リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメントの金利・インフレ戦略担当責任者、クリス・ジェフリー氏は独憲法裁の判決について、財政政策が引き締められ、米国債よりも欧州債を選好する自身の決定を後押しするものだと述べた。

もう一つの利点は、米国と異なり、ユーロ圏内の主要国は来年選挙が予定されておらず、追加支出圧力の大きな要因が見られないことだ。

欧州中央銀行(ECB)がコロナ禍による緊急購入プログラムで買い入れた債券を巡る満期償還金の再投資について、早期に停止するのではなく、24年末までに段階的に停止すると決定したことも強気心理に拍車をかけている。

こうした再投資は高債務国のイタリアなどを支援する。

<リスクも>

しかしリスクもある。

まず、ボラティリティーの高さだ。年末の上昇は、2月と9月に債券が大きな打撃を受けた価格の乱高下に続くものだ。欧州金融市場協会(AFME)が18日に発表したところによると、欧州債の1日当たり取引高で14年以降の上位3四半期はいずれも今年だった。

債務管理当局者によると、ヘッジファンドがECBの穴を埋めるのに役立っている。

加えて、年末ラリーでドイツ債利回りは一部銀行が予想する24年末水準まで低下したため、さらなる低下は限定的となることを示唆している。

イタリア国債の輝きがどこまで続くかもわからない。BofAはユーロ圏のアウトパフォームはドイツに集中し、高い資金調達ニーズがイタリアに重くのしかかると予想している。

バークレイズも、個人投資家からの需要が減退する兆しが見えればイタリア債への重しになりかねないと警告している。

ロイター
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