ニュース速報
ビジネス

国債の銘柄別保有、7割超えで取引減 日銀レビューで=関係筋

2023年12月06日(水)10時34分

日銀が4日に行った金融緩和政策を振り返る「多角的レビュー」のワークショップで、国債買い入れに伴う副作用として、銘柄ごとの保有比率が5割を超えると取引の最も高い買値と最も安い売値の差が拡大し、7割を超えると取引高が減るとの分析を示していたことが分かった。写真は、日銀旧館の全景。2023年9月20日に撮影。(2023年 ロイター/Issei Kato)

Takahiko Wada

[東京 6日 ロイター] - 日銀が4日に行った金融緩和政策を振り返る「多角的レビュー」のワークショップで、国債買い入れに伴う副作用として、銘柄ごとの保有比率が5割を超えると取引の最も高い買値と最も安い売値の差が拡大し、7割を超えると取引高が減るとの分析を示していたことが分かった。関係者2人が明らかにした。

取引値の乖離(かいり)幅を示す「ビッド・アスク・スプレッド」は、小さいほど市場の流動性が高いとされる。同関係者らによると、2013年に導入した異次元の金融緩和以降、債券市場の流動性が「総じて悪化した」と日銀が報告したという。

ワークショップには金融機関のエコノミストらが議論に参加した。金融市場、金融システム、日銀のバランスシート、非伝統的金融政策の4つのセッションで日銀の各局からの報告と指定討論者の報告が行われた後、討論が行われた。メディアには非公開だった。

国債市場は長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の下で日銀が大規模に買い入れ、日銀の銘柄別の国債保有比率は高い状況が続く。10月のYCC運用柔軟化以降、市場動向に応じて買い入れの減額が行われることもあるが、新発10年債(372回債)の保有比率は61.3%と5割を超え、カレント3銘柄以外の銘柄では8割から9割に達する(11月30日時点、市場推計)。

1日に日銀が公表した債券市場サーベイの特別調査では、YCC導入後の市場機能が1990年代後半以降で最も悪かった。YCC導入後について市場機能が「低い」、「やや低い」と回答した機関は、YCCそのものに加え、日銀の国債保有比率上昇を理由に挙げた。

市場は今回のワークショップを今後の金融政策を見通す材料として注目していたが、前出の関係者らによると、実際には12月の金融政策決定会合の内容やマイナス金利の解除時期を示唆するものはなかったという。関係者の1人は「異次元の金融緩和の効果と副作用を洗い出し、次の展開を模索する際の理論的な素地を作る狙いがあるのではないか」との見方を示した。

日銀は後日、当日の報告資料や議論の内容を公表する。

(和田崇彦)

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:アルゼンチン止まらぬ物価高、隣国の町もゴ

ビジネス

アングル:肥満症薬に熱視線、30年代初頭までに世界

ワールド

イスラエル、新休戦案を提示 米大統領が発表 ハマス

ビジネス

米国株式市場=ダウ急反発、574ドル高 インフレ指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    F-16はまだか?スウェーデン製グリペン戦闘機の引き渡しも一時停止に

  • 2

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 3

    「ポリコレ」ディズニーに猛反発...保守派が制作する、もう1つの『白雪姫』とは

  • 4

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 5

    インドで「性暴力を受けた」、旅行者の告発が相次ぐ.…

  • 6

    「人間の密輸」に手を染める10代がアメリカで急増...…

  • 7

    ロシアT-90戦車を大破させたウクライナ軍ドローン「…

  • 8

    「集中力続かない」「ミスが増えた」...メンタル不調…

  • 9

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 10

    米女性の「日焼け」の形に、米ネットユーザーが大騒…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 7

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中