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YCCのもとで粘り強く金融緩和継続する必要=9月日銀議事要旨

2023年11月06日(月)09時59分

 11月6日、日銀が発表した金融政策決定会合の議事要旨によると、9月会合ではイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)のもとで粘り強く金融緩和を継続する必要がある、との見解で一致した。東京都内で9月20日撮影(2023年 ロイター/Issei Kato)

Takaya Yamaguchi

[東京 6日 ロイター] - 日銀が6日発表した金融政策決定会合の議事要旨によると、9月会合ではイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)のもとで粘り強く金融緩和を継続する必要がある、との見解で一致した。1人の委員は、金融緩和を通じて賃上げのモメンタムを支えていくことが重要と指摘した。

議事要旨によると、別の1人の委員は、最近の企業の賃金・価格設定行動の変化は「タイトな労働市場に海外からのインフレ圧力が重なることで生じたもので、この変化の芽を大切に育てていくべき」と指摘した。

一方、ある委員は「物価安定の目標の達成の期待が確信に変わるには、企業の改革への取り組みに加え、新陳代謝やスタートアップ企業の資金調達強化などの取り組みが必要」と言及。「日本経済は今が正念場で、企業の改革意欲を後押しすることが求められる局面」と述べた。

9月会合では、1人の委員が「やや距離はあるが物価安定の目標の達成に近づきつつある」との認識を示し、「今年度後半は、来年に向けた賃上げ動向も含め、その見極めの重要な局面」と語った。

別の1人の委員は「2%の持続的・安定的な物価上昇の実現が、はっきりと視界に捉えられる状況にある」とし、「来年1―3月ごろには見極められる可能性もある」との見解を示した。

YCCを巡っては、7月会合で柔軟化した方針に沿って「長期金利は金融市場調節方針と整合的に推移している」との認識で一致した。大方の委員が「追加的な見直しを行う必要はない」との見解を示した。1人の委員は「柔軟化を経ても市場不安定化のリスクや市場機能面での副作用は、なお残存している」と指摘した。

複数の委員は、YCCの枠組み撤廃やマイナス金利の解除は「あくまで2%の物価安定の目標の実現との関係で、その成功とセットで論じられるべき」と指摘した。

そのうえで、1人の委員はマイナス金利を解除する判断について「マイナス金利よりゼロないし、プラスの金利が望ましいと判断したということを意味するが、2%の物価安定の目標の実現が見通せないもとで、そうした判断に至ることは考えられない」と付け加えた。

マイナス金利解除を巡り、1人の委員は「仮にマイナス金利を解除しても、実質金利がマイナスであれば金融緩和の継続」との見方を示した。これに対し、ある委員は「実質金利がマイナスであっても、金融緩和が修正に向かう動きが経済・金融に大きな影響を及ぼす可能性がある点には留意すべき」と指摘した。

9月会合では、必要があれば「躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」ことでも一致した。

ロイター
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