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日銀、経済・物価情勢を点検 マイナス金利やYCC枠組み維持か

2023年09月19日(火)12時23分

 9月19日、日銀は21—22日に開く金融政策決定会合で、イールドカーブ・コントロール(YCC)変動幅修正後の金利動向や経済・物価情勢を点検する。写真は都内にある日銀本店。4月撮影(2023年 ロイター/Androniki Christodoulou)

Takahiko Wada

[東京 19日 ロイター] - 日銀は21—22日に開く金融政策決定会合で、イールドカーブ・コントロール(YCC)変動幅修正後の金利動向や経済・物価情勢を点検する。物価は上振れリスクが続く一方で、国内消費の減速や海外経済の下振れリスクへの警戒感が根強い。現行のマイナス金利やYCCの枠組みは維持し、上下双方のリスクに機動的に対応する姿勢を示すとみられる。

<物価に上振れリスク、海外経済を懸念>

日銀は輸入物価の下落を背景に消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の対前年比伸び率は縮小していくとみているのの、企業の価格転嫁が続いており、審議委員からも「若干、まだ上振れのリスクはある」(高田創審議委員)との指摘が出ている。

日銀は7月の決定会合で改訂した展望リポートで2023年度のコアCPIの見通しを前年度比プラス1.8%から2.5%に大幅に引き上げた。足元の円安・原油高、政府の経済対策などを踏まえ、10月の展望リポートで物価見通しの数値を改めて示す。

先行きの見通しに関して、日銀内では海外経済の下振れリスクへの警戒感がなお強い。米経済は大幅な利上げにもかかわらず潜在成長率を上回る堅調な推移が続いているものの、景気の急減速や今春のシリコンバレー銀行破たんのように金融システム面の脅威が再び浮上することへの懸念が根強い。中国で景気減速感が強まっていることに対する警戒感も聞かれる。

国内でも物価高の持続は消費者の節約志向につながり、国内消費が圧迫されるのではないかとの懸念が出ている。

<マイナス金利解除の思惑、植田総裁の真意>

9日付の読売新聞に掲載されたインタビューで植田和男総裁は、来年の賃上げの持続性を見極めるに当たって「十分だと思える情報やデータが年末までにそろう可能性もゼロではない」などと述べ、マイナス金利解除の予想時期を前倒しするエコノミストが相次いだ。

マイナス金利の早期解除の織り込みを市場が進めたことについて、日銀では、植田総裁は物価の下振れリスクへの警戒感にも言及しており、真意が正しく伝わっていないのではないかとの声が出ている。

日銀では、労働需給のひっ迫や物価高の持続で、来年の春闘への期待感が出てきている。ただ、春闘への動きが本格化する前に、企業収益や日本経済の底堅さを見極める必要もある。現時点で、賃上げと物価上昇の好循環の持続性への確信は深まっておらず、マイナス金利の解除にはまだ距離があるとの声がある。

日銀は7月の決定会合でYCCの運用を柔軟化し、10年金利が0.5%を上回って推移することを許容した。足元、0.7%台で推移しているが、日銀では想定内との声が多く、YCCの枠組みは維持されるとみられている。

(和田崇彦 編集:石田仁志)

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