ニュース速報

ビジネス

コロナ後の金融・財政:日銀の金融政策正常化、米利上げが好機=木内・元日銀審議委員

2021年06月11日(金)19時16分

 6月11日 野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト木内登英氏(元日銀審議委員)はロイターとのインタビューで、米連邦準備理事会(FRB)の利上げは日銀が金融政策を正常化する好機との見方を示した。同じ局面で日銀が動けば、円高を誘発する可能性が低いと語った。写真は木内氏。2020年12月、東京で撮影(2021年 時事通信)

[東京 11日 ロイター] - 野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト木内登英氏(元日銀審議委員)はロイターとのインタビューで、米連邦準備理事会(FRB)の利上げは日銀が金融政策を正常化する好機との見方を示した。同じ局面で日銀が動けば、円高を誘発する可能性が低いと語った。

木内氏はFRBが2015年に政策金利の引き上げを開始したことに言及し、日銀内では追随して正常化に動かなかったことを「後悔する向きもあるのではないか」と推察。「FRBの利上げが見えてくる中であれば、日銀は円高リスクをあまり懸念せず正常化に進めるかもしれない」と語った。

3月の政策点検などを通じ、日銀はすでに事実上資産買い入れペースを落としているため、FRBに比べ利上げまでのステップは少なくなるとも指摘。その上で「次の一手は利上げだろう。まずはマイナス金利の解除が有力な選択肢となるだろう」と述べた。

木内氏はかねてより、日銀がイールドカーブ・コントロール(YCC)の弊害に対処する措置の選択肢として、現行10年に設定している長期金利ターゲットの短期化を挙げている。しかし、そうした措置は「黒田(東彦)総裁在任中可能かもしれないが、正式な正常化プロセスではない」とみている。

FRBが2023年に利上げするとすれば、同年4月の黒田総裁の任期切れと重なり、日銀は新総裁下で正常化を進める可能性があると指摘。その際は「長期金利のターゲットは撤廃し、短期金利ターゲットを引き上げていくのではないか」と述べた。

ロイターが6月に行った調査によると、FRBは今年8月か9月に量的緩和(QE)の縮小(テーパリング)に向けた計画を発表する可能性が高いと予想されている。資産購入の縮小を実際に開始するのは来年初めとみられている。 利上げについては、フェデラル・ファンド金利先物市場が先月末の時点で2023年1─3月期までに利上げ開始を織り込んでいる。[nL3N2NI2TE ]

    <物価目標の位置付け>

日銀が掲げる2%物価目標については、マイナス金利政策を解除する前に、より長期的なターゲットだと位置づけを修正する可能性があると予想。「非常に長い期間で達成する目標であり、足元の金融政策はそれに縛られない」と柔軟化させる可能性があるとした。

ゼロ近傍で推移している現在の物価については、経済の実力を映した安定した状態で「それが物価目標の水準であるべきだと思う」とした。「非常に小さいプラスというぐらい。レンジでいえばゼロから1%、ピンポイントなら0.5%ぐらいが妥当なのではないか」との認識を示した。

同氏は、中央銀行の役目は物価を安定させることだが、妥当な物価安定の水準は経済そのものに備わっているものと指摘。企業や働いている人の努力、政府の政策、少子化対策などで経済が高まった結果として物価は上がるものであり「金融政策で目標値を達成しようということ自体、無理なのだと思う」と述べた。

*インタビューは6月11日までに実施しました。

金子かおり、木原麗花

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベトナム次期指導部候補を選定、ラム書記長留任へ 1

ビジネス

米ホリデーシーズンの売上高は約4%増=ビザとマスタ

ビジネス

スペイン、ドイツの輸出先トップ10に復帰へ 経済成

ビジネス

ノボノルディスク株が7.5%急騰、米当局が肥満症治
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中