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アングル:好調の米国株、「ワイルドカード」はワクチン接種率

2020年11月28日(土)08時07分

11月25日、今月に入り新型コロナウイルスのワクチン3種類について高い有効性があると報じられたのを好感し、米ダウ工業株30種平均は24日に初めて3万ドルの大台を突破した。しかし投資家の間では、実際のワクチン接種が遅々として進まず、来年の景気は期待ほど回復しないのではないかとの懸念も生じている。ウオール街で24日撮影(2020年 ロイター/Brendan McDermid)

[ニューヨーク 25日 ロイター] - 今月に入り新型コロナウイルスのワクチン3種類について高い有効性があると報じられたのを好感し、米ダウ工業株30種平均は24日に初めて3万ドルの大台を突破した。しかし投資家の間では、実際のワクチン接種が遅々として進まず、来年の景気は期待ほど回復しないのではないかとの懸念も生じている。

ギャラップが今月1日までに実施した世論調査では、ワクチン接種を受けると答えた米国民は全体の58%と、9月調査の50%から増えていた。一方で接種を受けたくないとの回答は42%あり、その理由は開発の拙速さや安全性への懸念だった。

ワクチンの普及が遅れたり、接種拒否が広がったりすれば感染拡大が長引き、集団免疫の獲得が遅れるだろう。

ニューフリート・アセット・マネジメントのデービッド・アルブリクト最高投資責任者は「ワクチンが入手できるから来年半ばまでに世界は正常な状態に戻るはずだ、というのは過信だ」と話す。

ワクチンは無償なのか、もしくは保険のカバー対象になるかといった問題や、接種の本格展開、市民が接種を受け入れる比率などの不透明要因があるため、「トンネルの先に光は見えているが、トンネルがどれほど長いかはまだ定かでない」と述べた。

シティ・リサーチは23日のノートで、集団免疫の獲得は来年遅くにずれ込むと予想し、来年の世界の成長率を0.7%押し上げるにとどまるとの見通しを示した。2022年にはワクチン接種率が上がり、成長率の3%の押し上げにつながると推計している。

BMOグローバル・アセット・マネジメントのエルネスト・ラモス株式責任者は「鍵を握るのはワクチンではなく、ワクチン接種だ」と語る。

米連邦政府の新型コロナウイルス開発促進策「オペレーション・ワープ・スピード」プログラムの首席顧問、モンセフ・スラウイ氏の22日の発言によると、米食品医薬品局(FDA)は12月半ば、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンの配布を許可する可能性が高く、翌日にも一部の医療従事者向けに接種を開始するかもしれない。集団免疫の獲得には米人口3億3000万人の約7割が接種を受ける必要があるとされるが、それはたぶん来年5月までに達成できるとしている。

しかしBMOのラモス氏は、この見通しは過度に楽観的だと指摘。ワクチン接種による経済への恩恵が顕在化するのは来年後半になりそうなので、現在減速している米経済はさらに悪化する公算が大きいとした。

一方、クレディ・スイス・セキュリティーズの首席米株式ストラテジスト、ジョナサン・ゴラブ氏は、広範なワクチン接種が遅れたとしても、対象を絞った接種によって景気は回復する可能性があるとみる。

ゴラブ氏は「高齢者と前線で働く労働者へのワクチン接種が成功すれば、集団免疫獲得のずっと前に正常化プロセスが進むかもしれない」とし、S&P総合500種株価指数は来年末までに現水準から約13%上昇し、4050に達する可能性があると試算した。

コビッツ・インベストメント・グループのポートフォリオマネジャー、ジョン・バッキンガム氏は、ワクチン接種率は「ワイルドカード」だと認めた上で、ワクチンが入手可能となれば大規模な経済封鎖の再実施リスクはなくなると指摘。新型コロナの感染者が増え続け、米景気が今後数カ月間、険しい道を歩み続けるとしても、JPモルガン・チェース、靴販売チェーンのフット・ロッカー、家電のワールプールなど、景気回復の恩恵を受けそうな銘柄への強気姿勢は変えないと述べた。

(David Randall記者)

ロイター
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