ニュース速報

ビジネス

アングル:テスラ株がS&P500採用目前、さらに膨大な買い期待

2020年07月10日(金)10時51分

 7月9日、米株式市場で毀誉褒貶(きよほうへん)が最も激しい銘柄が、ついに「主流派」の仲間入りを果たすかもしれない。電気自動車(EV)メーカーのテスラがもう間もなく、S&P総合500種に採用されるとみられるからだ。写真は試運転用に駐車されたテスラの電気自動車。7月6日、韓国河南市で撮影(2020年 ロイター/Kim Hong-Ji)

Noel Randewich Chuck Mikolajczak

[9日 ロイター] - 米株式市場で毀誉褒貶(きよほうへん)が最も激しい銘柄が、ついに「主流派」の仲間入りを果たすかもしれない。電気自動車(EV)メーカーのテスラがもう間もなく、S&P総合500種に採用されるとみられるからだ。

実現すれば、過去1年で既に500%も値上がりしたテスラ株に新たな、そして膨大な買い需要が生まれる見込みで、マスク最高経営責任者(CEO)にとって大いなる成果となるだろう。

テスラが先週明らかにした第2・四半期の納車台数は予想を上回ったため、アナリストは、同社が22日に発表する四半期決算は黒字になるとの確信を強めている。その通りなら、これまでS&P総合500種に入る上で重大なハードルの1つになっていた、4期連続の黒字が達成される。

およそ2500億ドルに上るテスラの時価総額は、現在のS&P総合500種構成銘柄の95%の合計よりも大きい。つまり史上最も高いバリュエーションを持つ銘柄として、S&P総合500種に加わることになり、同指数に追随している投資ファンドにも相当な影響を及ぼすことになる。

指数を算出しているS&Pダウ・ジョーンズによると、S&P総合500種に追随するファンドの運用資産額は少なくとも4兆4000億ドルに達する。テスラが採用された場合、これらのファンドは指数の値動きとかい離しないように、早急に同社株を買わなければならない。

バーチュ・ファイナンシャルの指数・上場投資信託(ETF)調査責任者イバン・カジック氏は、指数ファンドの運用担当者はテスラ株を約2500万株購入する必要があり、時価で340億ドル相当になると試算した。

インバネス・カウンセルのティム・グリスキー最高投資責任者は「全ての指数ファンドがテスラ株を買う以外の選択肢は持てない。これが足元でテスラ株が堅調な理由の1つで、指数ファンドの資金流入を見越した動きだ」と説明する。

さらにS&P総合500種をベンチマークとしているアクティブ運用型ファンドも、テスラ株を購入するかどうか決断を迫られる。アクティブ運用型ファンドの追加資産も数兆ドルになる。

ビアンコ・リサーチを率いるジム・ビアンコ氏は「テスラのことが嫌いで、株価が過大評価されていると考えているとしても、現実としてS&P総合500種に採用されてしまえば、何兆ドルもの資金が動き、相応のポジションが形成される。ポートフォリオマネジャーはベンチマークの一環としてこれを無視できない」と述べた。

実際、これまで8営業日で43%上昇してきたテスラ株は、ウォール街でも投資家の好き嫌いが特に分かれる銘柄の一角を占める。好意派から見ると、テスラへの投資は再生可能エネルギーの台頭と化石燃料の衰退という流れを最も純粋に反映した動きだ。またテスラの「モデル3」セダンは、消費者の間に広く浸透している。

一方、S3パートナーズによると、テラス株の空売り規模は190億ドルと、米国の単一銘柄では最も大きい。株価が下がる根拠に挙げられているのは、ポルシェやゼネラル・モーターズ(GM)など既存メーカーとの競争がこれから激化するとの予想だ。2018年に株式非公開化計画を巡る問題でマスク氏が当局に2000万ドルの制裁金を支払って、会長を辞任した経緯があるため、テスラの企業統治への疑念もくすぶっている。

テスラがS&P総合500種に採用されるとの思惑を背景にしたトレーダーの動きが、最近の株価上昇をもたらしたのはほぼ間違いない。しかしビアンコ氏は、万が一採用されなかった場合、逆に値下がりする恐れがあると警告した。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米11月中古住宅販売、0.5%増の413万戸 高金

ワールド

プーチン氏、和平に向けた譲歩否定 「ボールは欧州と

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で

ワールド

ガザ飢きんは解消も、支援停止なら来春に再び危機=国
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中