ニュース速報

ビジネス

ECB、コロナ向け資産買取枠を拡充 ジャンク債購入は議論せず

2020年06月05日(金)02時35分

欧州中央銀行(ECB)は4日の定例理事会で政策金利を予想通り据え置く一方、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)への緊急対策として打ち出した債券購入プログラムを拡充した。フランクフルトのECB本部で4月撮影(2019年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

[フランクフルト 4日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は4日の定例理事会で政策金利を予想通り据え置く一方、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)への緊急対策として打ち出した債券購入プログラムを拡充した。パンデミックにより、戦後最大のリセッション(景気後退)に陥りかねない域内経済を支援する。

パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の買い入れ規模を6000億ユーロ(6740億ドル)増額し1兆3500億ユーロとしたほか、買い入れ期間を当初計画より6カ月伸ばし2021年6月末までとした。

またPEPPの下で満期を迎えた債券の再投資を少なくとも22年末まで実施するとした。

ECBは声明で「理事会はインフレ率が上下対称的なコミットメントに沿って、持続的な方法で目標に向かうことを確保するために、必要に応じてあらゆる政策を調整する用意ができている」とした。

主要政策金利は0%、中銀預金金利はマイナス0.5%にそれぞれ据え置いた。

ラガルド総裁は理事会後の会見で「ユーロ圏経済は前代未聞の縮小に見舞われている。新型コロナ感染が拡大し、抑制策が取られた結果、経済活動は急激に減速した」とした上で「経済の縮小や回復の程度は、感染封じ込めの期間や効果、所得・雇用支援策の成功、さらには供給能力や域内需要への影響がどの程度長引くかによって決定的に左右される」という見方を示した。

投資不適格(ジャンク)債の購入については、ECBが米連邦準備理事会(FRB)に追随するのではという憶測を否定し、その選択肢は議論していないと明言。同時に「引き続き状況を観察し、適切かつ相応の措置を講じる」とした。

ノルデアのアナリストは顧客ノートで「今回の緩和措置にはECBの本気度がうかがえ、ユーロ圏が新型コロナ危機を無事に乗り切るために必要なことは何でも行う用意があるとの意向が改めて示された。ECBはその役割を果たすだろうし、各国政府がそれぞれの役割を果たすことが期待されている」と述べた。

こうした中、PEPPの買い入れ増額を巡って、理事会では独仏などが小幅な拡大を提案し、5000億─7500億ユーロの範囲で議論されたことが関係筋の話で明らかになった。独仏のほかオランダなど数カ国が、市場で出ていた5000億ユーロ増額との見通しに沿って小幅な増額を提案。一方、南欧1カ国が7500億ユーロの増額を提案したという。

ECBはこの日、ユーロ圏の経済成長見通しを大幅に下方修正。基本シナリオで今年は8.7%縮小と、3月時点の0.8%成長から引き下げた。さらに悪化シナリオでは今年12.6%落ち込む恐れもあるとした。

来年は基本シナリオで5.2%、2022年は3.3%のプラス成長を見込む。しかし、ラガルド総裁は回復の兆しが現時点で乏しく、ベースラインに対するリスクは下向きと指摘した。

ピクテ・ウエルスマネジメントのフレデリック・デュクロゼ氏は、PEPPが9月には1兆8500億ユーロに増額されると予想。「景気回復がおぼつかず、ECBは当面、安定した介入を余儀なくされるだろう」と述べた。

ドイツ連邦憲法裁判所がECBの量的緩和政策(QE)を一部違憲と判断したことについて、ラガルド総裁は「良い解決策」が見つかると確信していると表明した。

また、欧州委員会が2021―27年のEU長期予算(多年度財政枠組み、MFF)を1兆1000億ユーロ規模と見込み、7500億ユーロの新型コロナ復興基金案を公表したことについては、「意欲的な」取り組みだとして歓迎した。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米安保戦略に反発 台湾問題「レッドライン」と

ビジネス

インドネシア、輸出代金の外貨保有規則を改定へ

ワールド

野村、今週の米利下げ予想 依然微妙

ビジネス

中国の乗用車販売、11月は前年比-8.5% 10カ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中