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対策は不十分、金利上昇なら日銀は無制限に国債買える=門間元理事

2020年04月09日(木)13時02分

元日銀理事でみずほ総合研究所・エグゼクティブエコノミストの門間一夫氏は、ロイターとの電話インタビューで、政府の緊急経済対策は短期的な落ち込みへの対応であり、経済への対応には不十分との認識を示した。写真は日銀本店。2019年1月撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

[東京 9日 ロイター] - 元日銀理事でみずほ総合研究所・エグゼクティブエコノミストの門間一夫氏は、ロイターとの電話インタビューで、政府の緊急経済対策は短期的な落ち込みへの対応であり、リーマンショック時を上回ると予想される経済への対応には不十分との認識を示した。

日銀が4月の金融政策決定会合で特別の措置を打ち出すことはないが、政府が国債発行を増やしても、金利上昇圧力がかかれば、国債を無制限に買えると指摘した。

<経済対策、需要喚起より所得ショックへの対応不可欠>

新型コロナによる経済への影響について門間氏は「足元の状況をみると、リーマンショック後の2009年の落ち込みを上回る、マイナス5%かそれ以上のマイナス成長になっても驚かない」との見方を示す。

政府はGDPの2割にあたる事業規模108兆円の経済対策を実行すると表明している。しかし門間氏は、短期的な対応としては100点だが、給付金等の所得補填には6兆円しかあてられておらず「リーマンショック時を上回るマイナス成長に陥るかもしれないことを考えると、全然足りないのではないか」と指摘する。

門間氏は、1-2年はかなり経済が低い成長にとどまるとすれば、その間に膨大な所得が失われるだろうと警戒感を示す。資金繰り支援だけでは不十分で、今後は経済が正常な姿に戻るまでの失われた所得をしっかり補填する政策が不可欠だという。

そのうえで、需要喚起策よりも「所得が膨大に消失する所得ショックにとにかく対応することが重要。大きい影響を受ける企業・家計の所得支援が今後の対策の最大のポイントになる」と強調する。

<4月決定会合で特別な措置想定せず、市場安定確保に万全を>

門間氏は所得支援は財政政策の仕事だが、日本銀行にできることは「市場の安定性確保に万全を期すこと」だと強調。3月の総裁談話や決定会合で決めた措置は「市場安定化にしっかり取り組んでおり、100点満点に近い」と評価した。

4月末に控える金融政策決定会合については「何か特別の新たな措置は打ち出されない」との見方を示したうえで、「80兆円の国債買い入れのめどがあるが、形骸化している。今は14-15兆円しか買っていないが、買うときは100兆円だろうがいくらでも買える」と指摘。政府が国債発行を増やし、金利に上昇圧力がかかれば、現在のYCC(イールドカーブ・コントロール)のもとで日銀は無制限に国債を買えるとした。

また、「社債やCP(コマーシャルペーパー)の買い入れも市場が混乱するなら拡充できる。ETF(上場投資信託)についても、必要であれば(年間12兆円という)天井の数字にあまりこだわらず買い入れをしていけばよい」と語った。

*この電話インタビューは8日に行いました。

(インタビュアー:木原麗花)

(日本語記事作成:浜田寛子 編集:石田仁志)

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