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焦点:限界近づく米国の零細企業、新型コロナで運転資金枯渇
当局による支援融資が迅速に実行されるかが、2007年の住宅バブル崩壊とその後の金融危機、景気後退に至る深刻かつ長期的な苦境と同じ事態を避けられるかどうかを決定する。写真は3月25日、ルイジアナ州ニューオリンズで撮影(2020年 ロイター/Jonathan Bachman)
Howard Schneider Ann Saphir Timothy Aeppel
[26日 ロイター] - 「2週間か、もってせいぜい1カ月か」――。新型コロナウイルス危機で米国の零細企業は厳しい資金繰りを迫られている。彼らは、連邦政府と連邦準備理事会(FRB)による支援を歓迎しているものの、家賃や税金や仕入れ代金の支払いなどのためには、一刻も早く銀行口座に運転資金を入れてもらう必要があるのだ。
カリフォルニア州オークランドの飲食店経営者テリー・ソック・ウォルフソンさんは既にバー1軒とレストラン2軒を休業しており、手元資金が乏しくなる一方なため、レストランの3軒目も営業を続けられるのはあと2週間と打ち明けた。30人いた従業員のうち24人は解雇している。
経営者が借り入れやクレジットカード取得のために個人資産を担保に入れて何とかキャッシュフローを支えているような、数百万の零細企業にとっては、かつてない規模の政府支援で新型コロナ危機の痛手を限定できるのか、あるいは実体経済を支えるこうした企業が危機の荒波をまともにかぶることになるのか、まさに今後数日が分かれ目になるだろう。
つまりどれだけ迅速に当局による支援融資が実行されるかが、2007年の住宅バブル崩壊とその後の金融危機、景気後退に至る深刻かつ長期的な苦境と同じ事態を避けられるかどうかを決定する。
議会が打ち出した経済対策には、約3500億ドル規模の零細企業向け融資のほか、中小企業支援のための資金4500億ドルをFRBが4兆ドル強まで拡大できる仕組みなどが含まれている。
こうしたプログラムとともに、中小企業庁(SBA)が6月までの賃金その他費用をカバーする資金を貸し出す。この融資は、企業が雇用を維持する限り、大半の返済が免除される。
FRBの融資は従業員500-1万人の企業、SBAの融資はもっと小規模の企業が対象になるとみられる。
さらにムニューシン財務長官は25日、零細企業が銀行に出掛けて即座に借り入れができるのと同じぐらいシンプルな資金調達を可能にするつもりだと発言した。現行方式ではSBA融資の実行に60-90日かかる可能性があるだけに、大きな変化だ。
<失業期間が問題>
直近の景気後退局面を見ると、08-10年で米企業数は10万社余り減少し、雇用は850万人も少なくなった。特に建設業と製造業の中堅企業が姿を消した。
今回は、サービス業と接客業が最も打撃を受けており、様相は異なるだろう。セントルイス地区連銀は、人との接触度が高い業種で働く4600万人が近く失業するかもしれないと試算。公衆衛生上の懸念に気を配りながら、彼らの失業期間をできるだけ短くすることが求められるとの見方を示した。
労働省が26日発表した週間新規失業保険申請件数は、過去最大の330万件に上った。ただ楽観的に考えれば、新型コロナのショックが短期間で終息した場合は、失業者のほとんどは以前と同じ仕事に復帰できるので、長期失業者が急増したり、工場側の生産体制見直しに伴い労働者の技能が新職場で通用しなくなる事態に陥ったりした08年のケースは再燃しない。
<乏しい余裕>
JPモルガンの調査では、零細企業の底力も垣間見られる。例えばハリケーンなどでの事例を調べると、企業は収入が激減したものの、同時に経費も思い切って削り赤字を縮小し、手元資金へのダメージを軽減したことが分かる。
とはいえ余裕は乏しい。60万社を対象にした調査によると、27日間の事業を賄えるだけの資金を保有している社は半数にすぎなかった。つまり1カ月前後たてば、経営者たちはほぼ、借金や個人の金融リスクを増大させるか、会社を畳んで別の道を歩まざるを得ないということだ。