ニュース速報

ビジネス

12月ロイター企業調査:五輪後の景気、6割超が「縮小」と回答

2019年12月06日(金)11時23分

 12月6日、12月のロイター企業調査によると、来年の五輪後に景気が縮小局面に転じるとの回答が全体65%を占め、新たな経済対策を要望する声が過半数となった。写真は東京・日本橋に展示された五輪マーク。8月5日撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)

[東京 6日 ロイター] - 12月のロイター企業調査によると、来年の五輪後に景気が縮小局面に転じるとの回答が全体65%を占め、新たな経済対策を要望する声が過半数となった。景気下支えに加えて、災害復旧、成長分野への投資を望む声が目立つ。ただこれ以上の歳出増は財政再建を阻み、バラマキや金融緩和が弊害を生む懸念も強く、追加対策には3分の1が反対している。

政府が外為法改正で海外からの日本企業への出資を厳格化したことについて、安全保障上必要との回答が62%を占め、技術漏洩などを防止するとして評価されている。ただ4割弱は厳しすぎる、ないしは強化不要と回答し、日本株の魅力が低下することや海外との提携が疎外されることなどの問題点を指摘している。

調査は11月20日から12月2日までの期間に実施、250社前後から回答を得た。

<五輪後の対策6割強が必要、財政再建重視で3割強が反対>

来年の景気について、五輪前まで「拡大局面」との見方が37%を占めている。「現状維持」との見方は57%と過半数を占め、落ち込みはさほど予想されていない。

一方、五輪後は「縮小局面」に転じるとの予測が65%に上った。「過去の五輪開催地で大会後の景気が縮む傾向は周知の事実」(サービス)、「急激に消費が落ち込む」(輸送用機器)などと不安の声が上がっている。

対策として公共工事を求める声が30%と最も多くなった。「災害対策インフラ計画に注力すべき」(電機)との声が目立つ。所得税減税も23%を占め、設備投資減税も21%となった。

IT・人工知能(AI)などの人材投資は17%でそれほど多くなかった。「中長期的な視点から」(電機)、「情報産業の投資を続けないと、米国や中国にのみ込まれる」(食品)といった指摘がある。

もっとも3割の企業はほぼ横ばいで推移するとみており、「都内再開発が進んでいることやインバウンド増加が景気を下支える」(サービス)、「特需には必ず反動はある。対応していはカンフル剤を打ち続けることになってしまう」(輸送用機器)、「国土強靭化予算がすでに対策となっている」(機械)など、これ以上の対策は不要との声も数多く寄せられた。

<出資規制厳格化、4割が事業疎外要因に>

11月に成立した改正外為法で、安保上重要な企業への出資規制の厳格化が決まったが、企業からは「安保上必要な措置であり妥当」との回答が62%を占め、理解を示す企業が過半数となった。「技術や経営ノウハウの海外流出が防止できる」として評価する声が38%を占めた。

「中国資本から国内企業買収を制限することは必要」(紙・パルプ)、「土地の規制についても規制が必要」(ゴム)などの指摘がある。また「軍の基地周辺や原発など重要防護施設周辺の土地などを含め、国による許可制とすべき」(卸売)との厳しい指摘も寄せられた。

他方で「必要な措置だが条件が厳しい」との回答が31%あった。「要件を強化する必要はない」も7%。

「日本株魅力低下」や「海外企業との提携が疎外される」、「必要な資本が得にくくなる」といった事業への影響を挙げる回答が4割に上った。

「企業価値向上の重しとなり、海外投資を呼び込む政府方針と矛盾する」(電機)、「他国との軋轢になる」(輸送用機器)、「資金調達の難しさが増すだけ」(小売)との反対意見も目立つ。

(中川泉 編集:青山敦子)

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

野村HD、1―3月期純利益は568億円 前年同期比

ビジネス

LSEGのCEO報酬、年最大1300万ポンド強に 

ワールド

コロンビア大を告発、デモ参加者逮捕巡り親パレスチナ

ビジネス

タイ自動車生産、3月は前年比-23% ピックアップ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中