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アングル:会長とCEOは兼任か分離か、米シティが重大決断

2018年10月13日(土)09時37分

 10月11日、米シティグループはマイク・オニール会長が数カ月以内に役員定年の72歳を迎えて退任する。写真は同社のロゴ。2017年、トロントで撮影(2018年 ロイター/Chris Helgren)

David Henry

[ニューヨーク 11日 ロイター] - 米シティグループはマイク・オニール会長が数カ月以内に役員定年の72歳を迎えて退任する。このため経営陣は、58歳のマイク・コーバット最高経営責任者(CEO)が会長職を兼務し、JPモルガン・チェースやバンク・オブアメリカなどライバル行と同じ路線を取るか、分権体制を敷くか、判断を迫られる。

ウェルズ・ファーゴのアナリストのマイク・マヨ氏は「企業統治の面では、会長交代はシティグループにとって過去6年間で最も重大な決断だ。リターンや経営効率、株価は過去最悪レベルにあり、今回の決定は重要だ」と話す。

オニール氏は6年前に会長に就任し、その直後に取締役会を主導してパンディットCEOの後任にコーバット氏を抜擢した。オニール氏はコーバット氏に白羽の矢を立てた理由として、世界金融危機で打撃を受けたシティの資産約8000億ドルの処理で際立った手腕を発揮したことを挙げた。

その後コーバット氏はシティの業績改善に取り組んだが、回復のペースは鈍く、その実績は自ら掲げた目標にも、競合他社にも及ばない。マヨ氏は「シティは業績改善についてもっと切迫感を持つべきだ」と述べた。

コーバット体制の下でシティの株価は約2倍に上昇した。しかし91%という10日までの上昇率は、JPモルガンの163%、バンカメの210%に比べて見劣りする。

キーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズのアナリスト、ブライアン・クラインハンツル氏は、シティグルプはこの1年間に株価が出遅れているが、経営陣はオニール氏の退任時に変革を求める圧力を感じていないと指摘。「株価が30%も下げれば対応が必要だが、シティは違う」と述べた。

シティの有形普通株に基づく株式資本利益率(ROE)は第3・四半期が10.8%。バンカメとJPモルガンはそれぞれ15.15%と17.2%だ。

クラインハンツル氏によると、シティの株価低迷は、2020年に有形普通株に基づくROEを13.5%に引き上げるとした経営目標の達成が危ぶまれているのが一因だ。

他の大手行では会長職とCEO職の兼務を巡り株主投票が行われた。バンカメは株主投票を受けて2009年に、会長とCEOを兼任していたケン・ルイス氏の会長職を解任したが、その5年後にはブライアン・モイニハン氏による兼任が復活。以来、兼任問題で3度も株主投票に直面した。

JPモルガンも取引で62億ドルの損失が発生したことを受けて、2013年にジェイミー・ダイモンCEOを会長職から解任する動議が株主から提出され、取締役会が食い止めた経緯がある。

ウェルズ・ファーゴのマヨ氏によると、シティグループの複数の有力株主は同氏に会長職とCEO職の分離を望んでいると明かしたという。

コンサルタント会社ボードスパンの創設者、アビー・アデラーマン氏によると、調査では会長職とCEO職の分離で業績が改善するか否か結論が出ていない。

アデラーマン氏は、会長職とCEO職の分離を提唱しているが、独立性や客観性は、人柄や経営陣内部で協力的な関係を築くといった要因ほど重要ではないと指摘した。

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